第6話 美咲、えっ?セクハラされてる?
入学式後のホームルームが終わった。
後はもう自宅へ帰るだけだ。
家に帰ったら何しようかな?
そんなことを考えながら山本美咲は配られた教科書をスクールバッグに詰めていた。
友達たちがバイバーイと言い、帰っていく。何人かのグループを作って帰る子や、一人で帰る子などさまざまだ。女子はたいてい群れる。男子はよくわからない。
美咲は周囲を見渡した。一人の女子生徒と目があった。三階堂あまねという生徒だ。あまねはひねくれた態度を取るが成績はいい子だった。
美咲はあまねに「三階堂さん、バイバイ」と言って、教室を出ようとした。
するとあまねは「バイバイなんか言わんでええから早う帰らんかい」と言った。
「もう、なんでそんなこと言うの」美咲はあまねの卑屈な態度に呆れながら教室をあとにした。美咲は何もあまねに悪いことはしていないのになぜ悪態をつかれるかわからなかった。あまりあの子と関わらないほうがいいと思った。美咲は心の中でため息をつき、教室を出て廊下を進んだ。ふと思った。教科書はすべて持って帰らなくてもいいと思った。
また教室に戻ろうと方向転換して、振り返ったとき、視界が遮られた。
「キャーッ」
美咲は男子生徒とぶつかった。男子生徒がすぐ後ろにいたのだ。美咲は尻餅をついた。 廊下に手を着いたとき、手首を痛めた。
ぶつかった男子生徒は微動だにせず美咲を見下ろしていた。すると男子生徒は美咲に手を差し出した。涼しい目元に、薄い唇。スッキリとした鼻筋。ロシア人みたい。この人。美咲はそう思った。
「大丈夫かい?立てるかい?」
美咲は立ち上がりながら、ふてぶてしく言った。
「立てるけど、あんた何で標準語なん?」
「東京から引っ越してきた」
「そうなんや、あたし、山本美咲」美咲はいつの間にか自己紹介していた。心のどこかで仲良くなりたいと思っていたのかもしれない。
「中野司、よろしく」司はそう言うと、手を差し出した。美咲は手を握り返した。ゴツゴツとした男の子の手だと思った。
「スカート、ホコリついてる」司は美咲のスカートのお尻の部分を手ではたき始めた。
「触んなっ、セクハラッ、今、手がお尻に当たったで」美咲は激怒したふりをした。本当はちょっと司の行動が照れくさかった。だってスカートのお尻の部分を手で触られているから。それってちょっと恋人同士みたい。
「でもホコリがついてる」司は表情を変えずに冷静に諭すように言った。そしてまた美咲のスカートをはたいた。
「スカートは触んなっぁ」美咲の頬は熱で熱くなった。
「あんた冷静になれよ。気が短い人は命も短い」司は冗談を言い冷笑を浮かべた。
「もうっ、アホなこと言わんとってっ」美咲は照れ笑いを浮かべながら言うと、司の横を通り抜け、教室へと入った。美咲の心臓はドキドキと脈をうっていた。
その様子を三階堂あまねは冷めた目つきで眺めていた。
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