第5話 隣の席の女の子

 入学式が終わり生徒たちは教室に入った。


 一年生は二クラスしかなかった。この地区は田舎なので少子高齢化がすすんでいた。

 

 田中勇気は一年一組の教室に入った。勇気の席は真ん中の一番前だった。勇気は席に付き、周りのクラスメイトたちを見た。みんな緊張しているのか、黙っている。クラスメイトたちも勇気のようにキョロキョロとしていた。ふと野村修二と目があった。修二も勇気と同じクラスだった。ちなみに同じ幼馴染みの美咲は二組だった。勇気はふと隣の席を見た。

 

 そこには見たことない顔の女子生徒がいた。色白で目がパッチリとして、頬がほんわりと朱く、小さな可愛らしい鼻、薄く形の整った白桃色の唇、うわぁ、かわいいと勇気は思った。あれ、こんな子いたかな?もしかして違う地区からの転校生かな?

 「あれ、もしかして転校生?」

 勇気は恐る恐る聞いた。

 「そうだよ。転校してきたの、東京から」

 その女子生徒は肩を上げ、うふっと片目を閉じた。「あたし、入学式、遅刻しちゃったっ」中野有沙は勇気に向かって手を差し出した。

 「ええっ、握手?」勇気は喉をゴクリと鳴らした。えっ女子の手を触るのか?

 勇気は恐る恐る手を差し出した。すると有沙が勇気の手をパシッと握った。

 「あたしたち、友達だねっ」

 有沙が目を弧にして、屈託なく勇気に笑いかけた。

 勇気はその笑顔を見て、ああ、天使のような女の子とはこういう子のことをいうのだなと思った。それと同時に有沙の手に触れ、勇気の全身に電流がはしった。

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