オーディション
俺達のさいたま高専での高校生活が始まった。
亜香里とはクラスが違うので校舎の中でたまにすれ違う程度だ。
まぁ顔を合わせれば挨拶位はするが・・・
ここでの授業、特に理数系は油断していると何やってるのか分からなくなる。
俺、入学する高校間違えたかも?
ゴールデンウィークに入り、やっと自分のこれからを考える時間をもてた。
自宅の玄関出たところで亜香里とばったり出くわした。
「ヤホッ~岳! 今日は休みだけど・・・ のんびり出来てる?」
「亜香里はいつも元気だな〜」
俺は高校では話す機会が殆ど無かったので嬉しかったが顔に出さない様に努めた。
「ねぇ岳? お願いがあるんだけど・・・?」
亜香里は俺の顔を覗き込んできた。
「亜香里からお願いなんて珍しいな。俺に出来る事なんだろうな?」
亜香里の悪戯っぽい笑顔が今日はなんだか眩しかった。
「今度ね、アキバ系アイドルオーディションがあるんだけど・・・ 緊張しそうだから一緒について来てくれないかな?」
「えっ? 俺がついて行っていいのか?」
「ウン! 私のダンスや歌を岳に見てもらいたいの! ダメかな?」
「俺なんかがついていっていいなら・・・」
「じゃ〜 今度の日曜日だから! 約束だよ。」
俺なんかが亜香里のオーディションについて行って何が出来るか分からないがお願いされたんだから・・・
そして当日、亜香里にノコノコついて来た俺って完全にういている。
どう見ても亜香里の邪魔してる様にしか見えなかった。
会場は観客席が有る体育館で一般人もかなり入っていたのでホッとした。
「亜香里、俺は観客席で見てるから頑張ってね!」
「ウン分かった。舞台の正面に座って応援してね!」
「舞台の正面? 亜香里から遠くなる様な気がするけど・・・ まぁ亜香里が言うなら・・・」
オーディションは歌とダンスの総合点で合否判定される様だ。
みんなアイドルを目指すだけあってレベルが高い。
亜香里の番になった。
亜香里が登場した時、俺の方を見てウィンクした?
そして・・・ ジッと俺を見つめながら歌いだした。
亜香里と目があって恥ずかしかった。
でも亜香里の透明な歌声が会場に響き渡り、目を離す事が出来ない。
亜香里はリラックスして楽しんでる様に見えたが俺はドキドキして心臓が飛び出しそうだった。
ダンスは5人一組で行われた。
亜香里が後方にさがって踊ってた時も何故か前の子よりも目立ってる。
姿勢やキレは誰にも負けないと思ったのは俺だけでは無いはず・・・
結果は合格だった。
亜香里に「おめでとう。良かったね。」とは言ったものの、俺とは別次元の遠い人になってしまった様に思えた。
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