長島悟
亜香里の後を少し離れて俺が教室に入っていくと長島悟はもう自分の席に着いて自習していた。
まったく嫌味なガリ勉だ。
「おはよ〜悟。自習しているところ悪いんだが・・・ ちょっといいかな?」
「なんだ岳? 恋愛相談か?」
俺は少しイラッとしながらも冷静を装う。
「間違っても悟に恋愛相談はしないよ。」
「そうか?じゃ〜なんだ?」
「昨日俺が風呂に入ってたらな、俺の両肩辺りからナイロン糸みたいなモノが生えていたんだ。コレなんだけど・・・ なんだか分かるか?」
俺はしまいこんだナイロン糸を悟の机の上に置いた。
「本当にナイロン糸みたいだな。たぶんコレは宝毛だろう。」
「宝毛?なんだソレ?」
「一般的には縁起がいいモノと言われているんだ。幸運を呼び寄せる"幸せの白い毛"なんて言われているらしぞ。」
「コレが幸運を呼び寄せるもの?」
俺はナイロン糸をつまみ上げてまじまじと見つめる。
「それから・・・ 自分で抜いたりはしない方がいいらしぞ。」
「エッ? もし抜いたりしたら?」
「そうだな・・・ 縁起物を粗末にするとバチがあたるだろ。きっと不運に見舞われるよ。」
「それって・・・ 誰かが亡くなったりとか?」
俺は北隣りのおばあちゃんの顔がうかんだ。
「まさかそこまでは無いだろが・・・ 俺もこれ以上は分からん! ところで俺も岳に聞いていいか?」
「なんだ? 俺なんかに答えられる事があるのか?」
「岳、おまえ亜香里とつきあってるのか?何回か亜香里と一緒に居るところを見かけたぞ。」
俺は悟の顔を暫くみつめる。
答えによっては・・・
悟に俺達は茶化されたりするのだろうか?
俺だけが茶化されるならべつに気にしないが・・・
俺の一言で亜香里が茶化されるのは可哀想だ。
なんて答えるのが正解なんだ?
そんな事を考えていたが結局何もうかんでこない。
「亜香里は俺のおばあちゃん(祖母)の生まれかわりなんだ。つまり俺の家族みたいなもんだ。」
自分で言っておいて・・・
「何、言ってんだ?」
ってツッコミ入れたくなった。
教室の隅の方で亜香里が「はぁ〜」ってため息ついてるのが聞こえてきた。
悟はぽか〜んとした顔を暫くしていたが・・・
「それじゃ〜 付き合っていないんだな? 俺は亜香里に告白するからな!」
とクソ真面目な顔で宣言した。
その途端、すぐ隣りで女子二人が話しをしていたがそのうちの一人の山本美樹が突然泣き始めた。
「これじゃ、告白する前にフラれたみたいじゃない!」
美樹は涙をうかべ教室を出ていった。
エッ?彼女、悟に告白するつもりだったの?
亜香里の方を見ると、悟に間接的に告白されて俯いていた。
そして美樹と一緒に居た桜井茜はツカツカと悟の前までやってきた。
「悟、あなた女のコを泣かせて平気な訳?すぐ追いかけて謝って!」
こんな時の茜は屈強なラガーマンを前にするよりも迫力があった。
悟は美樹を追いかけて教室を出ていって・・・
暫くして戻って来たと思ったら・・・
「俺と美樹、つきあう事になった。」
と恥ずかしそうに告げた。
亜香里の方はというと・・・?
「話しがあるから授業終わったら待ってて!」
と俺をキリッと睨みつけた。
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