亜香里
「おはよ〜 岳、迎えにきたよ。」
「おはよ〜 アカリはいつも元気だな!」
「そんな事ないよ。今日はブルーな気分だよ。」
「まぁ〜 そうだよな。俺もだよ。」
隣りに住んでる幼なじみの臼井亜香里と朝はいつも一緒に通学している。
昨日、あんな事があったが今日も割と明るく声をかけてきた。
「岳、ネクタイ曲がってるよ。」
亜香里は俺の襟元に手をのばすとサッとネクタイを整えてくれた。
「お母さんかよ?」
亜香里と目があって少し恥ずかしかったので、俺は照れ隠しに顔を横に向けた。
「今日は寒いね。」
亜香里は俺のポケットに手を入れてきた。
急に亜香里の冷たい手が触れてきてドキッとした。
「なんだよ、急に?」
亜香里は何かを思い出した様に俺を見つめる。
「あっ ハンカチ忘れたでしょう?はやく取ってきなよ。」
俺は顔をあかくしながらハンカチを取りに玄関に入っていく。
「本当に、お母さんかよ?」
俺が戻ると亜香里と俺は中学校までの道のりを並んで歩いた。
いつもだったら亜香里はニコニコ楽しそうに話しかけてくるが今日は違っている。
途中、亜香里は悲しそうに俯いて呟いた。
「おばあちゃん亡くなっちゃたね。」
「俺、今までいろいろ迷惑かけっぱなしだった。」
「そんな事ないよ。おばあちゃん嬉しそうだったモン。」
「エッ、何でそんな事知ってるの?」
「私だって・・・ おばあちゃんといろいろ話ししてるの! 岳はおばあちゃんに気に入られていたよ。」
「そうなんだ・・・ 全然気付かなかった。もう、おばあちゃんとは会えないんだね。」
「そうだね・・・ 悲しいね。」
会話も途切れ、俺たちは黙って歩いた。
中学校そばまで来ると、いつもと同じように亜香里は俺と距離をとる。
校門をくぐったあたりで、昨日しまったアホ毛の事を思い出した。
クラスメイトの物知り博士"長島悟"にでも後で聞いてみるか?
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