第十一章:王立学園編

第262話

 ……皆、貪欲過ぎ。


 ジャスミン姉ちゃんの番が終わったら、翌日はクリステラとルカの番だった。

 ふたりとも初めてだったけど、俺が持てる知識とテクニックを駆使してお相手した結果、ふたりとも野獣へと変貌してしまった。

 いや、野生の獣は一回で終わるから、これは人間である証明なのかもしれない。

 特にルカ。

 夜に何巡かして、疲れ果てて寝てしまった翌朝。目が覚めたら、ルカが俺の上に乗っかっていた。朝になって大きくなった俺のナニを見たら、我慢できなかったそうだ。

 結局、その行為の声で目覚めたクリステラとも一回した。シーツの交換にきた掃除のメイドさんには、その惨状に呆れられてしまった。ゴメン。


「愛する人と体を重ねる……これが幸せですのね! ああ、終わったばかりだというのに、今から次の順番が待ち遠しいですわ!」

「うふふ、うふふふふ。うふふふふふ」


 若干ルカが壊れ気味のような気もするけど、満足いただけたならなによりだ。


 その夜の相手はデイジーとキッカだった。小さいコンビだ。何がとは聞いてはいけない。

 このふたりには俺のビッグダディは少々大きかったから、ゆっくりジックリと時間をかけてお相手した。

 その甲斐あってふたりとも無事(?)開通し、そしてやはり嵌った。


「ヘソのあたりまでイッパイでな? そんで奥をグリグリされるんが苦しいやら気持ちいいやらで、もうイッパイイッパイやったわ!」

「……飛んだ」


 デイジーは途中で気を失ってしまった。男としてはしてやったりなんだけど、良く考えたらこの子もまだ未成年だ。この世界では合法とはいえ、そんな少女に気絶するほどの快楽を覚えさせてしまったのは、ちょっと拙かったかもしれない。


 そして次の日はサマンサとアーニャの番。


「うみゃあ、新築の初めての寝室で初めてのベッドで初めての夜だみゃ! 初めて尽くしで落ち着かないみゃ!」

「あ、アタイもだ。まだ朝なのにドキドキしちまうぜ」


 明日は王都の学園の入学式だ。式は昼からだけど、俺は教師でもあるので朝から準備がある。ということで、王都で前泊することにした。前ノリってやつだな。

 泊まるのは、王都に新しく用意した俺の別邸だ。武闘会の時に儲けたあぶく銭で、トネリコさんに用意してもらったものだ。

 上級貴族ともなれば王都に別邸を用意するのは常識らしいから、辺境伯になった俺には丁度よかった。まぁ、場所はちょっと郊外に近いから、街中に行くのにはちょっと不便かもしれない。

 上級貴族としては小ぢんまりとした屋敷だけど、その分庭は広い。ウーちゃんとタロジロが思いっきり走っても大丈夫。

 管理は王都で雇ったよく知らない人たちにお願いしてるけど、トネリコさんの紹介だから問題ないだろう。

 学園を卒業するまではこの屋敷が俺の拠点になる。まぁ、その気になれば領地まで日帰りで行き来できるから、仮の拠点ではあるけど。

 その王都屋敷に初めて泊まった夜、俺とサマンサとアーニャは結ばれた。


「ヤバいみゃ! まだ発情期じゃないのに発情しちゃったみゃ! 腰が止まらなかったみゃ! ボスはおかしいみゃ!」

「アレはやべぇ……頭の中が真っ白になっちまった。バカになりそうだったぜ。ミン様が言ってた以上にやべぇ……」


 まぁ、とりあえず全員に満足していただけたようだ。男としては満点を付けてもいいだろう。

 これからの事を考えると主に体力面で不安がよぎるけど、皆との相性は悪くなかったと思う。これからも一緒にやっていけるだろう。

 ……体力さえ持てば。



 そんなこんながあって今日は一月十日、学園の入学式の日だ。

 式は午後からなんだけど、俺は生徒兼新任教師だから、朝から学園に行かないといけない。打ち合わせや申し送りがあるそうだ。

 大まかな決まりや就業規則、式次第については書面で事前に通達されていたけど、既存の教師陣との顔合わせもあるから早めに来いってことらしい。

 学園に行くのは俺だけだ。基本的に、学園内は関係者以外立ち入り禁止だからな。

 その間、皆には各自の業務をしてもらうことになる。俺の護衛ってことになってるデイジーとアーニャは暇かもしれないけど。


 学園の正門前に着くと、既に何名かの大荷物を持った生徒が開門を待っていた。多分、地方領主の子女だろう。

 大きな領の貴族なら王都の屋敷から馬車で送ってもらえるんだろうけど、地方の小領主だとそうはいかない。王都に屋敷がないから、前泊した宿から荷物を持って直行ってことになる。中には領地からここまで直行という人もいるかもしれない。

 大荷物なのは、領地から王都までの長旅の荷物ってこともあるだろうけど、生徒は基本的に寮生活だから、そのための身の回りの品が詰まっているんだろう。

 俺は手ブラだ。

 俺は生徒ではあるけど教師でもある。だから特例で屋敷からの通学が認められている。寮に入るための大きな荷物は必要ない。学園指定のローブを羽織っているだけだ。

 普通なら筆記用具ぐらいは用意するものなんだけど、俺には平面魔法があるからな。記録はばっちりだ。

 ということで、正門わきの通用門へ……は向かわず、裏の職員用通用門へと向かう。


「おはようございます、新任教師のビート=フェイスです」

「えっ? おい、ちょっと待て!」


 王家発行の通行証を見せて門を通ろうとすると、ふたりいた守衛の中年男性のひとりに呼び止められた。まぁ、あり得るだろうとは思ってたから、特に気にはならない。


「ああ、この恰好ですか? どういうわけか新入生でもあるんですよね、僕。ご不審であるなら学園長へ確認を取ってください。少々なら待ちますから」

「あ、う、し、失礼しました。確認してまいりますので少々お待ちください!」


 俺についての通達は無かったらしい。

 まぁ、よくある事だ。前世でも、アポを取って訪問の約束をしたのに、受付には連絡が届いてなかったなんていうのはしょっちゅうだった。

 相手は主に開発の人だったからな。そういう部署の人たちは脳の処理を研究開発に極振りしていることが多いから、それ以外には気が回らない事も多い。だから慣れてる。

 こういう場合の対処は『冷静に常識的に』だ。

 焦ると挙動不審になって、より相手に不審感を抱かせてしまう。不機嫌になったりムキになったりするのも同様に悪手だ。

 相手によっては高圧的な態度をとられる場合もあるけど、あくまでも冷静かつ常識的に振舞うことが重要。怒っても何も問題解決にならない。ビジネスと割り切ってしまえば、それほど腹は立たなくなる。

 それに、俺の中身はもういい歳をした大人だしな。今日からは学校の先生にもなるんだし、より理知的な対応を心掛けなければ。

 ……この身体も、強制的に大人の階段を登らされたし。もう子供には戻れないんだなぁ……さらば、輝かしき少年の日々。


「お待たせ致しました。学園長がお待ちです。ご案内いたしますのでこちらへ」


 僅か十年で過ぎ去ってしまった少年時代を懐かしんでいたら、警備のオジサンが戻ってきた。そのまま案内してくれるみたいだ。

 ぶっちゃけ、このオジサンの気配を気配察知で追ってたから、場所は分かるんだけどね。でも折角だから案内してもらおう。気遣いを気遣いで返すのが大人の対応というものだ。


 学園長室は職員棟と思われる建物の一階の端にあった。手前には応接室という表札が掛かっていたけど、俺は学園長室に通されるらしい。

 中にある気配はふたつ。部屋の奥に並んでいる。椅子に座っている方が学園長かな?


「失礼します、フェイス辺境伯様をお連れ致しました」

「ご苦労様でした。お通ししてください」


 守衛のオジサンがノックしてそう告げると、中からすぐに返答があった。

 ドアが部屋の内側へと押し開かれる。ドアを開けた守衛のおじさんは、そのまま来た道を戻って行った。

 中に居たのは、椅子に座った白髪初老の男性と、その脇に立つ少し白髪が目立ち始めた壮年の男性だった。ふたりとも豊かな口髭を蓄えている。学園長と教頭先生ってところかな?


「ようこそお越しくださいました、フェイス辺境伯殿。当学園の魔法学教諭をお引き受けくださり、ありがとうございます。私が当学園の学園長を務めさせていただいておりますミッツ=アンザイレンで、こちらは主任教諭のベクター=ワイリーと申します」

「……ワイリーです」

「初めまして、ビート=フェイスです」


 あー、学園長はともかく、主任教諭のワイリーさんにはあからさまに歓迎されて無いな。

 まぁ、こんな子供が今日から同僚だって言われたら、そりゃ不審に思うよな。子供に授業なんかできるはずがないから、何かこう、政治的な取引があったんじゃないかって。

 自分の職域に無粋な政治を持ち込まれたら、真面目な人ほどいい気分にはなれないだろう。他所でやれって言いたくなるはず。

 うん? ワイリー?


「ワイリーというと、もしかして先ごろお亡くなりになられたワイリー男爵殿のご一族で?」


 先ごろワイズマン伯爵と揉めた、ロックマン子爵とつるんでたのがDr.ワイリーことワイリー男爵だった。

 男爵は不幸な事故でお亡くなりになられたけど、思い返してみれば目の前のこの先生とどこか似ている気がする。


「スレインは私の兄です。今の男爵家は兄の子のクラークが継いでいます」


 やっぱりだった。なるほど、それもあって俺に対しての態度が硬いのか。


「申し訳ありません、フェイス辺境伯殿。本来なら教諭陣と顔合わせしてから午後の入学式の打ち合わせを行うところなのですが、教諭の一部から辺境伯殿の、その、なんといいますか、お若くていらっしゃるので、その……」


 学園長の顔に浮かんだ玉の汗を見るに、下からの突き上げと上(王家)からの通達の板挟みになってるんだと思われる。中間管理職の辛さだな。

 学園長が言い淀んでいるから、俺が言いたいことを引き継ぐことにした。多分、ありがちな理由だろう。


「ああ、指導能力に疑問があるという事ですね?」

「そ、そうなんです! それで、まことに申し訳ないのですが……」

「辺境伯殿には試験を受けていただきたい。当学園の卒業試験と同等問題です」


 なんか、そう言う事になった。

 入学前に卒業試験、ねぇ?

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