第261話

「え~、皆さん、ご入学おめでとうございます。校長のビート=フェイスです」


 ぼーっとして回らない頭で、講堂の檀上から祝辞を述べる。

 一段高い上に演台があるから、新入生からは俺が見えないだろう。声だけは平面魔法のマイク&スピーカーで届いているはず。

 けど、今回はそれがありがたい。多分、俺の顔は過労と寝不足で酷いことになっているから。目の下には隈が出来ているかもしれない。こんな顔を新入生には見せられない。


 昨夜は本当の意味での初夜だった。そして今朝の太陽は黄色かった。曇り空だったけど、俺には黄色い太陽が見えた。そんな気分だった。

 俺のリトルボーイがビッグダディになったから子作り解禁ということで、昨夜のジャスミン姉ちゃんは非常に積極的だった。積極的すぎた。

 しかし、俺にも前世での経験がある。処女の小娘(というにはアチコチ大きいけど)にいつまでも主導権を渡してはおけない。持てる知識とテクニックをフルに使って、徹底的に彼女を満足・・させてやった。男の意地だ。


 それがいけなかった。いや、イってはくれたんだけど、イカせ過ぎた。

 子作りの気持ち良さに目覚めてしまった彼女は底なしだった。

 よく『女は底なし』って言うけど、彼女の場合は次元が違った。身体強化があるから、すぐに体力が回復してしまうのだ。

 さらには治癒魔法だ。

 俺が『もう出ないよ』って状態になっても、治癒魔法ですぐに復活させられてしまうのだ。あれはズルい。いくらでも出せてしまう。どこのエロゲだよ。


 求められて応えないのは夫婦不和の元。拒否するわけにもいかず、延々付き合う羽目になってしまった。俺も身体強化があるから付き合えてしまった。

 結局、朝までアレをナニして、なんとかジャスミン姉ちゃんとの戦いには勝利できた。男としての面目は保てたと思う。

 多分、まだジャスミン姉ちゃんはベッドの上じゃないかな? 体力云々じゃなくて、睡魔に勝てなくて寝てしまった感じだったからな。

 けど、俺はまだ寝るわけにいかない。結婚式の二日後でも仕事がある。それがこの冒険者学校の入学式だ。創立者は辛いよ。

 そんなわけで、フラフラのカサカサの状態で入学式の挨拶をしなければならなかった。今日を楽しみにしていた新入生諸君には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 本当に申し訳ない。



「本当に大丈夫ですの? ビート様」

「ああ、うん、ありがとう。大丈夫、ひと眠りしたら回復すると思うから」


 振り子みたいに頭の揺れる俺をクリステラが気遣ってくれる。ありがたい。

 昼過ぎに冒険者学校の入学式は無事(?)終わり、明日からは授業が始まる。

 十分な数の講師を用意したから、俺や仲間の皆が講義をする必要はなくなった。俺たちがするのは、基本的には経営と教育内容のチェックだけだ。

 全部抱え込むと、捌ききれなくてパンクしちゃうからな。任せられるところは任す。

 まぁ、偶に特別講義を行うことにはなってるけど、年数回程度だから問題ないだろう。


「おかえり、ビート! 昨夜ゆうべはお疲れ! 今夜もよろしくね!」


 フラフラの状態で屋敷に帰ると、ジャスミン姉ちゃんが復活していた。睡眠と栄養を十分摂ったからか、元気いっぱいだ。

 あー、女は満足・・するとお肌艶々になるって本当なんだな。艶々を通り越してピチピチしてる。


「ああー、お手柔らかに。でも僕まだ子供だからね? 寝る時間は必要だからね?」

「もう、しょうがないわね! いいわ、その代わりいっぱい気持ち良くしてよね!」

「……鋭意努力致します」


 くっ、何故この世界には淫行罪も保護条例も無いんだ! 誰か俺を守って!

 あ、作ればいいのか。俺が領主だもんな。好きに法律を作れるじゃないか!


「よし、十五歳以下の児童との淫らな行為を禁止する法律を作ろう!」

「却下よ!」

「却下ですわ!」

「あかんでー」

「あらあら、駄目ですよ。うふふ」

「……イヤ」

「アタイも嫌、かな?」

「なんで!?」


 まさかの反対多数!? 満場一致で否決された!


「そもそも一般市民は十歳から働いとるし、ある意味自立した大人や。作るんやったら十歳未満やろ」


 くっ、確かにこの国じゃ十歳から働くのが普通だ。貴族くらいだよな、十五まで働かないのは。

 その貴族も勉強してるわけで、遊んでるわけじゃない。モラトリアムではあるかもしれないけど。


「貴族家当主が後継ぎを残すのは使命ですわ。新興の我らがフェイス家にとっては、喫緊の課題でもあります。ビート様に何かあったら御家断絶の危機ですもの。それを制限するような法律は認められませんわ! 作るにしても、貴族は例外とすべきですわ!」

「子作りできるならもう大人だみゃ」

「そうよね! それに、あんなに気持ちいいこと我慢なんてできないわよ!」


 ジャスミン姉ちゃん、それはちょっと欲望に忠実過ぎだ。

 あれ? 皆の動きが止まった?


「そ、そんなに気持ちいいのかよ?」


 いや、サマンサ? そんな顔を赤くしながら訊かなきゃいけない話題じゃないからね?


「もう、すっっっっごい気持ちいいわよ! 初めては痛いってお母さんに聞いてたけど、最初からものすごく気持ち良かったわ! でも、自分で触ってみてもそれ程じゃなかったのよ。きっと、ビートが上手いのね!」

「坊ちゃんが……」


 な、なんだよ!? 耳まで真っ赤にして、そんな潤んだ上目遣いで見られても……っ!


「お上手ですのね……」

「うちも、もうすぐ……」

「うふふ、うふふふふ」

「……楽しみ」

「アタシはまだ発情期じゃないけど、気持ちいいなら興味があるみゃ」


 皆の目が獲物を狙う肉食獣の目だ!?

 いかん、身の危険を感じる! 逃げなければ喰われる!?


「みんな、待ちなさい!」


 ジャ、ジャスミン姉ちゃん! 流石正式な奥さんだ、一声で皆の動きを止めた。早くも妻の威厳を獲得したか? やっぱり序列って大事だな。


「今日まではアタシが占有させてもらうけど、明日からは順番に二人ずつって決めたでしょ? 大丈夫、ビートはアタシが復活させるから、ちゃんと全員気持ち良くしてもらえるわよ!」


 何その順番って!? 俺、聞いてないよ!? しかも二人ずつ!? なんて生々しい取り決めだよ!


「そ、そういえばそうでしたわね。わたくしとしたことが少々取り乱してしまいましたわ」

「せやな。焦らんでも順番は回ってくるしな」

「うふふ。明日、明日の夜が待ち遠しいわ」

「ちぇっ、アタイは最後なんだよなぁ」

「うみゃ。サミィ、一緒に楽しむみゃ」

「……イヤン」


 ……俺、死ぬときは腎虚かも。

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