第3話 明らかに世界が違う

茂利は冷静にバイクを運転している。




目の前に見えた人たちが、救助にきた自衛隊やレスキューなどでないことはすぐに分かった。すれ違った女性たちがダイバースーツのようなものに身を包んでいたからだ。勿論、遠目で女性と分かるのは、女性特有のシルエットからだ。




「っと!」


「!?」




茂利が人身事故を起こさないようにすれ違うと、彼女らは一斉に振り返る。




「ヒナ!そっちに何かがいく!」


「オートバイだと思うけど、警戒して!」


『了解』


茂利の耳がかろうじて、彼女らの発する言葉を拾い上げた、どうやらこの先にいる責任者へ自分の存在を報告しているようだ。


組織的な行動をしているが、自分を追いかけてくるなり呼びかけてきたりする様子がない事から、やはり救助にきた人たちではないと確信に至る。


路地を抜けて開けた通りに出た茂利の目の前には、先ほどのスーツに身を包んだ女性たちがモンスターを駆除しながら巨大兵器に対峙しているところであった。


「な!」


「!!」


驚いた茂利だが、驚いたのは彼だけではない。女性たちがまるで物珍しいものを見たかのように、一斉に茂利を見た。


「なんでこのエリアに人が!?」


「いや、それよりも男性!?」


茂利よりも先に口を開いたのは彼女たちである。どうやら彼女たちの中では、自分たち以外の人とターゲット以外はいないと想定していたようだ。だが、それ以上に茂利が気になったのは、自分が男性という点に着目されたことであった。











茂利の進行方向、2kmほど先にダイバースーツに身を包んだ女性たち、30名近くがこれから来るターゲットへ対処するために陣取っていた。


「ヒナ!私たちの友軍以外、それも男性がいるみたい!」


「そう」


その中にヒナと呼ばれた彼女がいた。


150cmもなさそうな身長で短く返した彼女は、周りが背の高い女性たちの中でもひときわ目立つ。


「原子情報の解析はできた、みんなすぐにスーツの情報適合を行って頂戴。それから、他の部隊と交信はまだつながらない?」


ヒナがそういうと、ダイバースーツが環境に適した形態に代わり、彼女たちの顔が見えるようになる。


「第二、第四、……全部隊と交信途絶!」


「仕方ないわ、とりあえず。基本条項第2条に従って、男性の安全を優先しつつ、作戦の遂行を……!?」


そう命令を出そうとした瞬間、ヒナたちの障壁を貫いて弾頭が地面に落下した。衝撃波や粉塵と共に、彼女たちはその軽い身体を宙へと飛ばされた。







ヒナたちの中心で起きた爆風は茂利の位置から、きちんと確認できていた。そのため、安全を最優先に茂利がコースを変更してまた路地へ入ろうとしたときである。


一人の少女、先ほど女性たちの中心で指揮を執っていたヒナが吹き飛ばされてきたのだ。


「!!」


普通に考えたらぶつかれば大事故、かといって回避しようにもリスクが伴う。とっさに受け止めてしまった茂利だが、普通にこれがあり得ない異常な事であることに気付いてしまう。


普通ならば茂利も彼女に当たって、バイクから放り出されていないとおかしいのだ。路地に入ってすぐさま茂利は彼女の安否を確認する。


「おい!あんた!大丈夫か!?」


「……」


意識を失っているようだが、身体に損傷やダメージは見受けられず脈と息もある。どうやら彼女たちの着ているスーツがダメージを吸収したようだ。


「……明らかに技術が違うな……こりゃ」


茂利がそうつぶやいて、もはや自分のしる世界じゃないことを悟った。

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