②⇒〖部屋を破壊する〗

『よし』


 深呼吸をひとつ。次にわたしは、ワンルームのど真ん中に置いてある椅子を持ち上げる。


『え、なにするの? 望ちゃん』

『決まってるでしょ。ぶっ壊すの。この部屋』

『え!?』

『驚かなくてもいいでしょ。なんでこんなオブジェを置いたのか知らないけど、その⋯⋯行為に余計なものを置いておいた犯人のミスね。獲物に武器を渡して、ただで済むと───』


 椅子を振り上げ、

 白で埋め尽くされた壁面に、


『思うな───!』


 ブン、という風を裂く音。フルスイングによる木製椅子の一撃は、なんと、本当に壁に穴を開けてしまった。


『あれ、ほんとに? まじでっ?』


 やった自分が一番おっどろき。こういうのって、壁はノーダメなのが定石じゃないの?


『ま、ラッキーか。ほら、空君も机持って』

『う、うん。よし。加勢しよう』

『二人で同時にやれば、脱出できるくらいの穴は開けられるかもしれないし。だから、いくよ!』

『おお!』


 空くんも準備は出来た。わたしも、さっきの攻撃で脚の一本折れた椅子を再度持ち上げて、目標カベを見据えた。


『『せーの───ッッ!』』


 瞬間、

 凄まじいほどの衝撃音が部屋に響いた。〝ドンガラガッシャーン〟が一番よく似合うような。そんな感じ。


 視界が煙で閉ざされる。咳き込みながらも空君を探して、手を伸ばした。


『空君、あ、穴! 開いたよ穴!』


 よろめきつつ、数歩進んだ先に彼の服の袖らしきモノを見つけた。すかさず掴んでは引っ張ってみるものの、反応が無い。彼は男の子のくせに割かしビビリなので、当然の反応かもしれないが。


 ⋯⋯しかし。彼、かなり厚みのあるジャケットを着ていたはずなのだけれど。この手の感触、どうもビニールっぽいような。


 煙が晴れていく。目を擦りながら、反応の無い彼の肩を掴む。


『もう⋯⋯、こういう時、先導するのが男の子なんじゃない?』


 と。彼の顔を覗き込もうとしたその時。


『コん弐血わ』


 にっこりと微笑む、血塗れの熊の顔。今の今まで人間と錯覚していたソレは、ビニールでできたクマの着ぐるみだった。


『ちょ───ぇ』

『イタ打き増ス』


 ぱっくり。ピンクの熊は、感謝の気持ちを天に捧げて、食べ残すことなく、小さな生命を胃袋へ放り込んだのでした。


 めでたしめでたし。


DEADEND/NO.2ゴチソウサマデシタ


───────────────

目次画面に戻り、

選択肢を選び直して下さい。

下にスクロールすると、

選択肢③〖絶体にできない状況にする〗に続きます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る