第13話 白と黒②
――――それから、俺は次々とCランク迷宮を攻略していった。
踏破する迷宮は、選べるカードキーの種類が多い地下迷宮型のみ。
さらに、アンゴルモア前の時点で、なるべく面倒じゃなかった迷宮を選び、時には星母の会の門も使って各地へ飛んで攻略していった。
なお、この際サラちゃんには、星母の会の自室で待っていてもらうことにした。
さすがに、完全な私用である迷宮攻略につき合わせるのは申し訳なかったからだ。
サラちゃんも千歌ちゃんと遊びたがっていたようなので、特に不満もなかった。
そうして、十日ほどかけて五つの迷宮を踏破した頃。
ようやく、俺はお目当てのカードを手に入れることができた。
「ついに、絶対解除持ちが一枚手に入ったか」
星母の会の自室で、俺は一枚のカードを手に、喜びを噛み締めていた。
それは、血のように紅い馬に乗った骸骨の騎士が描かれたカードだった。
――――レッドライダー。
ヨハネの黙示録に登場する四騎士の内、戦争を司るとされる騎士である。
黙示録の四騎士と言えば、西欧では日本で言う『四天王』並みに鉄板の概念であり、キリスト教圏内では文句なしのAランクだが、日本ではギリギリでBランク最上位にとどまっている。
その役割は、仏教における四天王の真逆。四方の守護を司る四天王に対し、「神の怒り」の具現化である黙示録の四騎士たちは、地上に「支配」「戦争」「飢餓」「死」を齎し、世界を破壊する存在とされる。
その逸話は、カードにおいては『絶対解除』のスキルとされ、黙示録の四騎士が揃うことで絶対解除の効果を持つ特殊スキルを使用可能となる。
さらに、黙示録の四騎士たちは単体でもBランク最上位クラスの力を持ち、レッドライダーは、呪い型の全体装備化スキルを持つ。
呪い型の装備化スキルは、デメリットがある代わりに、ワンランク上の装備化スキルとなる(中等クラスの呪い型の場合、その強化率は憑依型装備化スキルの高等クラスと同等)のだが、高等クラスの呪い型の場合、ステータス強化などの付随する効果が追加される。
レッドライダーの場合、使用中生命力が常に減っていく代わりに、味方全体にレベルアップの魔法を掛け、戦士、狂化のスキルを付与するというものだ。
呪い型のデメリットと、狂化スキルとの組み合わせにより爆速で生命力が減っていくことになるが、その爆発力は凄まじい。
また、他の黙示録の四騎士たちも、『支配』を司るホワイトライダーは眷属強奪のスキルを、『飢饉』を司るブラックライダーは眷属封印のスキルを、『死』を司るペイルライダーは絶対攻撃のスキルを持つ。
全員揃った際には、相手の眷属を奪い、呪い型の全体装備化をした上で眷属封印して、絶対解除でバフやら防御をはぎ取った上で絶対攻撃でトドメを刺してくるという、クソ見たいな攻撃をしてくることになるわけだ。
Aランクとなるが故にまず遭遇することのない西欧諸国からは「黙示録の四騎士がBランクで出るなんて可哀想……w」と言われていたとかいないとか。
救いは、滅多に出現しないこと。仕様上、Cランク以下の迷宮では四体纏めて出ることはないことか。
なお、Bランク階層では普通にセットで出てくる模様。
「だが、その分、戦力としては頼もしい」
全体装備化スキルは、自軍の戦力を格段に向上させてくれるからな。
しかも、このレッドライダーは、カードキーのため限界突破のスキルを持ち、真耐性強化なるスキルも持っていた。
これは、真耐性貫通の対となるスキルのようで、真耐性貫通を相殺し、それ以外に対しては全体的に耐性を上げるスキルのようだった。
なお、この際の耐性とは、状態異常耐性だけでなく攻撃全般に対する耐性を意味する。
正確なところはわからないが、概ね50%ほど耐性を上げてくれるようだ。
カードの耐性に関しては、+100%をマックスとして、-100%まであると考えられており、+100%の場合は攻撃を完全に無効化し、-100%の場合はダメージが二倍になるとされる。
雪女で例えるなら、氷の攻撃を完全に無効化し、代わりに炎の攻撃に倍ダメージといったところか。
鈴鹿が持つ弱点無効は、攻撃を受けた際、このマイナス補正をゼロにしてダメージを等倍にするスキル、真耐性強化は常時一律50%ほど耐性を上げてくれるスキルとなる。
50%も上がれば、攻撃を半減させるも同然で、もともと耐性の高い神族などの種族であれば、多くの属性を無効か、それに近づけることが出来るだろう。
全体装備化持ちには、ピッタリのスキルと言えた。
「……問題は、どうも俺とは相性が悪そうなことか」
悪魔みたいな見た目と逸話を持つレッドライダーだが、れっきとした神の使いであり、天使となる。
天使の多くは性別のない『無性』であり、『両性』の多い悪魔よりもさらに俺とは相性が悪い。
最悪、マリオネット――シンクロの応用で、無理やりカードを操作する――を使えば、一時的に使うことも可能だろうが、できればこれだけのカードとなると普通に使えるようにしたい。
そうなると、俺ではなく相性の良いマスターに預けるのが最良となるわけだが……。
「織部、かな?」
天使であるレッドライダーであるが、その属性は間違いなく『悪』。見た目も相まって、織部とは相性が良い……はず。
レッドライダーを預けるとなると、一気に織部の戦力が突出することになるが。
「アンナにもホーラーの三相女神を渡すし、ちょうど良いか」
俺は、丸テーブルの上に載ったカードを見ながら言った。
俺が今回手に入れたカードは、レッドライダー、エウノミアー、エイレーネー、朱雀、そして天石門別神の五枚。
エウノミアーとエイレーネーは、この前ギルドから回収したアストライアーの三相女神で、三枚揃うことで眷属封印のスキルが使えるようになる。
アストライアーはまだアンナに渡していないし、三枚セットなら決してレッドライダーに格は劣らない。
……少しだけイライザをホーラーの三相女神のどれかにマイナーチェンジさせるか? とも考えたが、さすがに眷属封印を2セットは無駄だ。
秩序を司る女神であるホーラーたちは、学校に残ることの多いアンナへと預けるのがベストだろう。
同じように、朱雀は師匠へと預けるつもりである。
師匠には白虎をすでに預けているし、青龍へと霊格再帰できるC+を持っている。あとは玄武が揃えば、愛のと合わせて2セットの絶対結界スキルが揃う。
四神、レッドライダー、ホーラーの三相女神があれば、学校の防備も万全に近い。
そして、もう一つ。俺は天石門別神へと視線を向けた。
「ようやく、ウチにも門の神が来たか」
天石門別神。古来より天皇の宮殿の四方の門に祀られていた、日本の門の神である。
さすがに、真スキルではないので、各地の門番の門を介した移動はできないが、同じ門の権能同士や転移門を介しての移動は可能だ。
門の神がいる最大のメリットは、転移門で移動できる箇所が増えることである。
学校を拠点に各地に転移しようと思えば、転移門の片方は必ず学校に設置しなければならない。
学校と言う地点Aに三つの転移門の片方を置き、もう片方を地点B、C、Dに一つずつ転移門を設置する形になるわけだ。
だが、門の神がいるなら、転移門を「A→B、C→D、E→F」という風に設置することで、AからB~Fまで転移できるようになるのだ。
……ちなみに、門の神ならどの転移門でも転移できるわけではなく、座標を知る門以外には転移できず、座標の検索等も出来ないらしい。
ならば門番の門にも触れることで、転移出来るようになるのかと試してみたが、これはできなかった。
おそらく、そこが真スキルの門の権能との差なのだろう。
この門の神は、学校に預けておく予定である。
たぶん、お袋か愛あたりの管轄となるだろう。
ちなみに、Bランクのカードキーは、真眷属召喚以外に後天の真スキルを持つらしく、それぞれのカードが持っていた後天真スキルは以下の通り。
・レッドライダー→真耐性強化:すべての耐性を50%向上させる。真耐性貫通と相殺。
・エウノミアー→真耐性強化
・エイレーネー→真眷属維持:通常の眷属維持スキルの効果+自身の戦闘力(装備化スキルは、含まない)と同数分、自らが召喚した眷属を魔力消費無しで永続維持できる。
・朱雀→真生還の心得:瀕死級のダメージを負った時、全生命力を回復させ、一分間『不滅』状態となる。一日一回まで。
・天石門別神→真耐性貫通:相手の耐性を確定で50%無視する。真耐性強化と相殺。
さすが真スキルというべきか、どれも凄まじい性能である。
これらの真スキルは、イライザのコピースキルと、玉手箱の修行のコンボで、すでにカードたちへと習得済みである。
玉手箱での修行は、精神的にシンドイものがあるとはいえ、さすがにこれを習得させないという選択肢はあり得ない。
新しい真スキルを得るたびに、二ヵ月ごと、真眷属強化の分も合わせて計十カ月ほど玉手箱で修行した。
・蓮華:怪力(NEW!)→金剛力(CHANGE!)、生還の心得→真生還の心得(CHANGE!)、気配察知(NEW!)→力の泉(CHANGE!)、真耐性貫通(NEW!)、真耐性強化(NEW!)
・イライザ:耐性貫通(NEW!)、耐性強化(NEW!)
・ユウキ:頑丈(NEW!)→金剛体(CHANGE!)、生還の心得→真生還の心得(CHANGE!)、高等魔法使い(CHANGE!)、真耐性貫通(NEW!)、真耐性強化(NEW!)
・メア:魔法陣(NEW!)+魔力感知(NEW!)+魔力隠蔽(NEW!)→知恵の泉(CHANGE!)、生還の心得→真生還の心得(CHANGE!)、眷属強化→真眷属強化(CHANGE!)、真耐性強化(NEW!)
・鈴鹿:持続回復(NEW!)→生命の泉(CHANGE!)、怪力(先天スキル内包)→金剛力(CHANGE!)、瞬足(NEW!)→韋駄天(CHANGE!)、物理強化(NEW!)→力の泉(CHANGE!)、直感(NEW!)
・マイラ:生命の泉(NEW!)、頑丈→金剛体(CHANGE!)、瞬足(NEW!)→韋駄天(CHANGE!)、怪力(NEW!)→金剛力(CHANGE!)、気配察知(NEW!)
・ドレス:生還の心得→真生還の心得(CHANGE!)、眷属強化→真眷属強化(CHANGE!)、真耐性貫通(NEW!)、真耐性強化(NEW!)、真眷属維持(NEW!)
・モリー:瞬足(NEW!)→韋駄天(CHANGE!)、無拍子(NEW!)、気配察知(NEW!)→力の泉(CHANGE!)、文武一道(NEW!)、直感(NEW!)
・ヴィー:生命の泉(NEW!)、頑丈(NEW!)→金剛体(CHANGE!)、瞬足(NEW!)→韋駄天(CHANGE!)、直感(NEW!)、気配察知(NEW!)
・オードリー:追加詠唱(NEW!)、魔法陣(NEW!)→知恵の泉(CHANGE!)、頑丈(NEW!)→金剛体(CHANGE!)、瞬足(NEW!)→韋駄天(CHANGE!)、直感(NEW!)
・アテナ:追加詠唱(NEW!)、魔法陣(NEW!)、魔力感知(NEW!)+魔力隠蔽(NEW!)→知恵の泉(CHANGE!)、頑丈(NEW!)→金剛体(CHANGE!)、瞬足(NEW!)→韋駄天(CHANGE!)
・アケーディア:詠唱短縮(NEW!)→詠唱破棄(CHANGE!)、魔法陣(NEW!)、追加詠唱(NEW!)、魔力察知(NEW!)+魔力隠蔽(NEW!)→知恵の泉(CHANGE!)、魔法陣(LOST!)+追加詠唱(LOST!)→魔法陣(NEW!)+追加詠唱(NEW!)→知恵の泉(CHANGE!)、眷属強化→真眷属強化(CHANGE!)
・プリマ:頑丈(NEW!)→金剛体(CHANGE!)、生還の心得→真生還の心得(CHANGE!)、瞬足(NEW!)→韋駄天(CHANGE!)、真耐性貫通(NEW!)、真耐性強化(NEW!)
今回の修行の基本的な方針としては、カードキー勢は真スキルの習得を、それ以外については知恵の泉や力の泉の習得を目指してもらった。
これは、基礎的なステータスの底上げと、他の勢力を回る際に海外のローカルスキル持ちをトレードで手に入れられることを期待してのことである。
修行の流れとしては、新しく手に入れたカードからイライザが真スキルをコピー→ドレスへ教導→ドレスが習得したら次の週に装備化スキルを使って全体に共有し修行を効率化、という形となった。
そのため、イライザにはドレスへの真スキルの教導のため専念してもらったため、あまり新しいスキルを得ることが出来なかった。
ただし、真スキル化のための熟練度は溜まっているため、真なる者コピー時は「眷属強化」「耐性貫通」「耐性強化」「生還の心得」の各スキルが真スキル化する。
戦闘時は、「真なる者」をコピーして戦うこととなるだろう。
なお、「真なる者」コピー時のクリアランスレベルだが、どうやらコピー先のクリアランスレベルがそのままコピーされるようであった。
そして、もう一つ。
俺は、アケーディアへと視線を向けた。
そこには、アスタロトへとランクアップし、黒い堕天使の翼と天使風のローブ姿となったアケーディアの姿があった。
今回の修行で、アケーディアが高等魔法使いと知恵の泉のスキルを得て、ついにアスタロトへのランクアップ条件を満たした。
そこで彼女には一度カードキーのヴァンパイアへとランクダウンしてもらい、アスタロトへとランクアップさせた。
その際、魔法陣と追加詠唱のスキルが失われてしまったので、もう一度修行して再取得する必要があったが、これでようやくアスタロトとなることができた。
【種族】アスタロト(アケーディア)
【戦闘力】2450(+650UP!)
【先天技能】
・ソロモン第29の大悪魔にして堕ちた女神:地獄の公爵にして異教の女神を起源に持つアスタロトの知と豊穣の権能を使用可能。
・ネビロスとサルガタナスの主:ソロモン72柱クラスの大悪魔ネビロスとサルガタナスを召喚可能。一日一回、一体ずつ。
・堕ちた座天使:ドミニオンとほぼ同等の能力を有する堕天使たちを召喚可能。一日一回、四十体まで。
・毒竜を従えし者:自身と同等の戦闘力と後天スキルを持つ竜を従える。この竜は、独立した存在でありアスタロトとは生命力を共有しておらず、眷属属性を持たない。毒竜玉、毒竜鱗、毒竜息、巨大化を所有する。
【後天技能】
・大悪魔のプライド
・乙女心
・良妻賢母:料理、清掃、育児、性技を内包する。
・農家:耕作、栽培、畜産、集団行動を内包。
・高等魔法使い
・生還の心得
・かくれんぼ
・眷属維持
・魔力の泉→知恵の泉(CHANGE!)
・眷属強化→真眷属強化(CHANGE!)
・真なる者
・限界突破
・真眷属召喚
・武芸百般::武芸に関する技術をすべて修めた証。武術、剣術、槍術、弓術、柔術、盾術、甲冑術、騎乗、投擲、水泳、戦略、教導スキルを内包する。
・無拍子
・物理強化
武芸百般と無拍子は、カードキーのヴァンパイアが所持していたスキル。アスタロトが元々持っていたスキルのほとんどはアケーディアの所持スキルに統合され、残ったのは物理強化のスキルのみとなった。
キマリスの代名詞である装備化スキルこそ失われてしまったが、それに代わる強力な眷属召喚スキルと、騎竜を手に入れた。
この騎竜は、アケーディアと同等の戦闘力を持ち、全ての後天スキルを共有する上、眷属体でもないため対眷属スキルの影響も受けないという特性を持っていた。
タイプとしては、ヘスペリデスのラドンに近いだろうか。
対眷属スキルも珍しくなくなってきた現環境において、中途半端な眷属召喚よりよほど役に立つスキルと言えた。
ちなみに容姿的には、キマリス時代とほとんど変化はない。
顔立ちや、褐色の肌、ストロベリーブロンドの髪もキマリスだった頃のままで、服装が天使風に変わって、堕天使の黒い翼が生えてきたくらいである。
むろん、その圧倒的な戦闘力を誇る胸元も健在である。
「さて、と……」
一通り、カードたちのステータスをチェックし終えた俺はグッと背伸びをした。
レッドライダーたちの真スキルの習得も済んだことだし、そろそろ学校の様子を見にいきがてら、アンナたちにカードを渡しに行くか。
そう考えていると。
「噂をすれば影ってヤツか」
ちょうど、アンナからカードギアでメッセージが届いた。
見れば、「エリアAのCランク迷宮の攻略が終わったようなので、完全沈静化をしたら神無月さんを連れて一度学校に帰還して欲しい。難しければ、カードの派遣だけでもお願いします」とあった。
ナイスタイミング、と思いつつチラりとサラちゃんを見る。
千歌ちゃんとTVゲームに興じるの後姿は年相応の女の子そのものだ。
「うーん、どうすっかな……」
サラちゃんを連れていくべきか、否か。
正直、彼女の力は懸念していたほどではなかった。
スキルこそBランクの域は超えてはいるものの、戦闘力自体は限界突破持ちBランクの域に留まっている。
そのスキルもどちらかというと防御向きで、同じ限界突破スキル持ちのこちらを害せるほどのものではない。
この分では、当初警戒していた、Aランクのネフィリムとして学校で暴れまわられる……という心配はしなくて良いだろう。
強いて言えば、絶対結界のスキルで愛やお袋たちを人質に閉じこもられたら困ることか。
だが、それは彼女をウチの家族に合わせなければ済む話だし、この一週間彼女を見た限り、そんなことをするようにも見えない。
……一応、聞くだけ聞いてみるか。
「サラちゃん、俺はちょっと仲間のところへ行ってくるけど、どうする?」
「ウタマロの仲間?」
俺の言葉に、サラちゃんは興味あり気に振り向いた。
「それってどれくらい?」
「時間差が掛かるから、結構かかるかも……」
と俺が答えると、彼女は「ん~!」と腕を組んで悩み。
「ウタマロの拠点とか仲間には、ちょっと興味あるけど……いいや。ここでチカと遊んでる」
「そ、そっか……」
あっさりと断られ、俺は頬を掻いた。
こりゃ、マジで裏は無さそうだな。
仮にウチの家族を人質に取るように言われているなら、確実に乗って来たはず。こちらの警戒を解くために演技をしているなら、虚偽察知で引っかかる。つまり、これは素の対応。
さすがに、警戒しすぎだったか……そもそもどっちかというと人質は彼女の方だしな。
「じゃあ、俺は行ってくる」
「いてら~」「いってらっしゃいませ」
TV画面から目を離さずにおざなりに手を振るサラちゃんと、しっかりとこちらに頭を下げてくる千歌ちゃんという、実に対極的な見送られ方をされながら、俺は師匠のいるエリアAへと転移したのだった。
【Tips】モンスター同士の繁殖
フェイズの進行により、カードやモンスターの生殖能力の枷は既に外れ、繁殖も可能となっている。
男女の性別がある種族であれば、通常の生物同様に性行為によって同族を増やしていくわけだが、では男女どちらかの性別しかない種族や無性などの性別が無い種族の場合はどうなるのか。
方法は大きく分けて三つ。
一つは、『自分を作り出したとされる存在に新しく作ってもらう』方法。
たとえばリリムであれば、親であるリリスが人間相手の他種族相手に身ごもることで、生まれてくる。
またイザナミとイザナギの子供とされる神々であれば、両者の間に新しく生まれてくるなど、逸話通りの組み合わせでも生まれてくる。
次に、『ネフィリムを使う』方法。
ネフィリムは、親の種族の性別に関係なく男女生まれてくる。
ネフィリムと人間の間でネフィリムと人間が生まれてくるように、モンスターとネフィリムとの間ならモンスターとネフィリムが生まれてくる。
リリスのような単一の性別を持たない種族でも、ネフィリムを介することで同種を増やすことが可能となる。
最後が、『無から生み出す』方法である。
神であれば信仰、悪魔であれば魂など、特定のエネルギーを収集することで、モンスターは単体でも同種を増やすことが可能となる。
天使のように無性の種族や、アテナなどの処女神のように性行為自体がリスクとなる種族は、この方法が最もポピュラーな方法となる。
なお、この方法で生まれたモンスターは、性格や容姿、能力も親と同一となる。
生殖というよりは、クローンが近いかもしれない。
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