第15話 不意打ち②

 



「相変わらず、反則的に便利だね、ソレ」


 迷宮に着いてすぐ最下層へと飛ぶと、一条さんがハーメルンの笛を見て羨ましそうな顔をした。


「まあね。これのおかげで、今の俺があると言っても過言ではない」


 実際、これが無かったら俺は学生トーナメントで優勝することは愚か、出場することすら厳しかっただろうし、そうなれば師匠と出会いリンクを教えてもらえることもなく、この夏休みでようやく三ツ星になれたかどうかと言ったところだろう。

 とは言え……。


「まあ、それも俺が学生だからってのはあるんだけどね」


 ぶっちゃけ、専業なら泊まり掛けで攻略すれば良いだけだから、そんなに転移アイテムは必要ないっちゃ必要ない。

 もちろん、あればクッソ便利なのは確かだが、転移アイテムが必要となってくるのは、Cランク以上の深い迷宮からだ。

 Cランク以上の迷宮ともなると、マヨイガなどのカードがあっても、定期的に地上で休まないと身体よりも先に精神の方がおかしくなってしまう。それは、魔法で定期的に心を癒しても同じこと。基本的に、迷宮はまともな人間が長く滞在できるようにできていないのだ。

 逆に言えば、Dランク以下の迷宮ならば一気に攻略して、あとでゆっくり休めば良いだけの話となる。


「確かにね。……うーん、なかなか主見つかんねー」


 話ながらもドローンを使って索敵をしていた一条さんが、ぼやくように呟いた。

 俺や冒険者部の面々ならリンクを繋いで斥候要員を出すところだが、リンクを覚えたばかりの彼女にはそれはまだ難しい。

 そこで彼女が取り出したのが、このドローンだった。

 ドローンを使っての索敵というのは、俺にはなかった発想で、最初一条さんがそうやって索敵していると聞いて感心したものだ。


「アサシン型……かな」


 もしアサシン型の主とすれば、ドローンでの発見は難しいだろう。


「俺が索敵しようか?」

「いい。アタシ自身が出て、釣りだす」


 そう言って、一条さんはリビングアーマーを召喚し、装備した。

 アサシン型の主を見つけ出すのは、ちゃんとした索敵要員がいても難しい。

 ダイレクトアタックの脅威も、装備化をしているならば半減する。

 自分を囮にして敵を釣りだす……というのは、乱暴ではあるが解法の一つだった。

 俺もそのまま続こうとして、ふと思いとどまる。


 ――――そうだな、一応、俺も装備化しておくか。


 俺は、一枚のカードを呼び出した。

 現れたのは、女性らしい曲線を描いた鎧を身に纏った首無しの騎士、デュラハン。

 そのままいつもの流れでイライザに装備化しようとする彼女を慌てて呼び止める。


『待った! 装備化するのは、俺だ』

『えー!? マスターと!?』

『ああ、お前もようやくドジを克服したことだしな――――ドレス』


 俺は、ほほ笑んで彼女の名を呼んだ。

 そう、彼女はついにドジスキルを克服し、名前を得たのだ。



【種族】デュラハン (ドレス)

【戦闘力】800(MAX!)

【先天技能】

 ・産声は死の始まり

 ・亡者にも鎧

 ・静寂の馬車


【後天技能】

 ・運動音痴→精密動作(CHANGE!)

 ・ドジ→七転八起(CHANGE!):何度転んでも諦めない挑戦の精神を持つ。スキルの習得率上昇。精神異常に対する耐性。逆境時、行動に極大の強いプラス補正。

 ・不屈の精神:どんな失敗や逆境にもめげない鋼の精神を持つ。やや学習しない傾向アリ。精神異常に対する耐性。逆境時、行動に大きなプラス補正。

 ・剣術:刀剣の扱いに特化した武術スキル。武術スキルと効果重複。特定行動時、行動に大きなプラス補正。

 ・武術(NEW!)



 動きを阻害していた運動音痴のスキルは、動作を補助する精密動作へ。

 長らく彼女の不名誉な代名詞となっていたドジスキルは、七転八起というレアスキルへと変化した。

 どちらも劇的に強くなるスキルではないが、確実に役に立ち、また今後の成長に繋がるスキルである。

 これはまさに彼女と、彼女を導いたイライザとオードリーの努力の成果であり、これを祝福して俺は彼女にドレスの名を与え、彼女もそれを受け入れてくれた。

 ドレスの名をつけたのは、彼女が主に女の子カード相手に装備化することを考えてのことであるが、時と場合によってはこうして俺が装備化することもある。

 男の俺がドレスというのもおかしいが、まあ、彼女自身の性別も考えてのことなので仕方ない。


『やったー! ついにこの日が! このままずっとカード専門のワンポイント要員として使われるのかと!』


 イライザではなく、俺が装備すると聞いたドレスは諸手を上げて歓喜する。


『テンションたけーな……、そんなに嬉しいか?』


 蓮華が、呆れ顔で聞く。


『そりゃもう! 装備化スキル持ちの真価が発揮されるのは、マスターとの装備化時ですしね。いやー、キマリスさんが入ってきて、てっきりこのままマスター専用機の座を奪われるのかと……』

『そんなもんか……? アタシにはよくわからん世界だぜ……』


 俺もよくわからない。たぶん、装備化スキル持ちにしかわからない世界なのだろう。

 ……今後も、俺よりもイライザとかとのセットが多いことは、今は黙っておこう。


『まあ、それはさておき、一条さんも待ってることだし、さっさと装備化しよう』

『了解!』


 半透明化したデュラハンが、俺の身体に重なるように纏わりつくと、そのまま甲冑が具現化。気付けば俺は、全身に鎧を纏っていた。

 これが、装備化の感覚か。

 なんというか、違和感がないのが、逆に違和感というか。

 全身に甲冑を纏っているのに重さは特に感じず、兜越しでも素顔と同じように視界は開けている。軽く小手を撫でてみれば、鈍くではあるが触感もしっかりとあった。

 最初の一歩目こそ上昇した身体能力に戸惑うも、ドレスと軽くシンクロしたらその感覚のズレもすぐに消えた。

 これまではイライザに使用した方が効率的なため使ってこなかったが、なるほど、これは凄い。装備化して自分自身で戦うマスターが、一定数いるのも頷ける。

 軽く準備運動して感覚を馴染ませると、俺は待たせていた一条さんへと振り向いた。


「お待たせ」

「別に……ってか、北川って普段装備化使わねーの?」


 う、さすがにバレたか。

 まあ、俺の動きは明らかに初めて装備化を使う奴そのものだっただろうしな。

 一緒に安全地帯を出ながら答える。


「まあ、カードに使う方が多いかな」

「へえ、勇気あんね」


 勇気? 俺が首を傾げていると、一条さんは言う。


「アタシは、装備化無しで迷宮攻略するとか絶対無理だわ」


 勝気な彼女らしくない言葉に一瞬驚くも、すぐに納得する。


「まあ、ウチにはイライザさんがいるからなあ。下手な装備化よりも安心感があるし」


 逆に、俺は一条さんみたいに装備化を使って直でモンスターと戦うとかは無理だ。

 最初の頃、警棒片手にゴブリンに挑みかかったこともあったが、なんて無謀なことをしたのかと今思い返しても肝が冷える想いだ。

 俺の言葉に、一条さんも納得したように頷き。


「プレイスタイルの違いってヤツかー」

「そうそう」

「ってか、ならなんで今回は装備化したん?」

「ああ……それは――――」


 と俺が答えようとしたその時。


「かおりっち!」


 突然、一条さんのカードが、彼女の前に飛び出した。同時に、吹き上がる鮮血。

 身を挺してマスターを庇ったのは、粗末な麻の貫頭衣を身に纏った大柄の美女、フェニア。俺が貸した二対一体の女奴隷のカードだった。

 腹部を刀で貫かれたフェニアは、しかしその柄をしっかりと握りしめ、文字通り血を吐きながら叫んだ。


「今……!!」

「死ね、オラァァァッ!」


 間髪入れず、一条さんが見えない敵がいるであろう空間へと斬りかかる。……が。


「あぁッ!?」


 スカッと見事に空ぶった一条さんが、怒りの声を上げた。


「逃げんじゃねー! 糞がッ!」


 フェニアの腹部に刺さった凶器を床に投げ捨て、傷口にポーションを掛けてやりながら、一条さんは周囲を見回して吠える。


「……………………」


 一条さん、ガラ悪いなー。

 吠える彼女を一歩離れたところから眺めながら、そんなことを思う。

 俺が半ば他人事なのは、戦力的に余裕なのもあるが、敵が俺を襲ってこないとわかっているからだ。

 無傷の迷宮のモンスターは、基本的に狙いやすい方を狙う傾向がある。

 装備化したマスターと、装備化してないマスターなら後者を。Bランクカードを召喚しているマスターと、Dランクカードしか召喚していないマスターなら後者を……と言った具合に、様々な条件を複合的に判断し、より狙いやすい方を狙うようになっているのだ。

 俺が普段しない装備化をしたのも、主の奇襲を一条さんの方に誘導するためである。

 これは別に彼女を囮にしたわけではなく、むしろ一人で戦った場合の経験を積みたいという彼女の意思を尊重しただけだ。

 本来なら彼女一人しかいないわけで、そうなれば必然的に奇襲されるのも一条さんの方になるからである。

 ……とはいえ、その意図を説明する前に奇襲されてしまったわけだし、ここは少しだけアドバイスを送ってあげようか。


「一条さん。敵ならもう見えてるよ」

「ッ!? ……クソッ! そういうことかよ」


 怪訝そうな顔で俺を振り返った彼女だったが、すぐに答えに思い至ったのか、バッと床に投げ捨てた剣の方を見た。

 すると、バレたかと言わんばかりに、血まみれの刀がふわりと宙に浮く。

 透明化や気配遮断のスキルが有効なのは、一撃を与えるまでだ。

 奇襲後に刀が姿を現したのは、そういうわけであり、逆に刀以外に姿を現す敵がいないならば、それは刀こそが敵の本体というわけだ。

 しかし……と宙に浮く刀を見て、密かに思う。


 ――――付喪神とは、なかなか珍しいモンスターだ。


 付喪神は、少々特殊な装備化モンスターである。

 その能力は、物品への憑依。既存の物品に憑依することで、モンスター化することができる。

 迷宮で出てくる付喪神は、大抵迷宮が用意したのであろう剣や鎧に憑依した状態で出現してくるのだが、カードとしてドロップした場合は、こちらの好みで憑依するアイテムを選べる。

 その際、元となったアイテムの能力は、そのままスキルとして引き継がれる。

 つまり、イライザが持つダーインスレイヴに憑依させた場合、その回復阻害と戦闘力アップの効果をそのままスキルとして持った付喪神となるというわけである。

 当然付喪神自身もCランク相当の戦闘力を持ち、マスターや他のモンスターへの装備化することもできる。

 難点は、カードに取り込まれてしまうので迷宮の中でしか使えなくなってしまうこと、消耗品に憑依させると使い切った瞬間にロストしてしまうこと、別のアイテムに憑依替えすると前のアイテムは消え去ってしまうことか……。

 少々癖はあるが、魔道具をスキルとして取り込むことができるというユニークなカードだった。

 もしドロップしたら面白いことになるかも、と思いつつ一条さんと付喪神の戦いを見守る。


「……ッ!」


 人間ではありえない軌道から斬りかかってきた付喪神に対し、一条さんは一歩下がって冷静に剣で受け、はじき返す。

 そこへ、メニアが強烈な蹴りを叩き込むも、くるりと身を翻した付喪神が刃で受け止め、鮮血が舞った。

 ……武器そのものが本体の敵に、格闘は厳しいな。


「フェニアとメニアは無理に前に出なくて良い! グロッティの歌を!」


 一条さんもそう思ったのだろう、双子の奴隷たちを後方へ下げ、残りのDランクカードたちと共に自分が前へと出る。

 そのまま激しく剣戟を交わす。


「おいおい、すげぇな……」


 思わず、ポツリと呟く。

 Cランクの付喪神相手に、Dランクのリビングアーマーで互角に打ち合ってやがる。

 膂力と速度で勝る付喪神に対し、無駄のない動きと先読みで対等に渡り合う一条さん。

 道中でその腕は見せてもらってはいたが、ワンランク上の敵とも戦えるレベルだったのか……。

 ただ、惜しむべきは……。

 俺は、彼女の残りのDランクカードを見た。

 ライラプス、オーク、ユニコーン、ジャック・オー・ランタン……。

 この攻略中に得たそれらのカードたちは、前衛・後衛・補助とバランスよく揃ってはいるものの、付喪神と一条さんの応酬を前に手をこまねいているだけで、碌に助けに入れていない。

 それはカードたちが悪いわけではなく、純粋に付き合いの浅さからくる連携不足と……なによりも一条さんが上手くリンクを使えていないことに原因があった。

 彼女は、手に入れたばかりのカードでリンクを使えるだけのレベルには、まだない。

 ここでテレパスだけでも使えたら、一気に形成は傾くのに……。

 そう思いつつも、まだ一条さんには難しいか……と考えていたその時、四枚のカードたちが突然戦いに参加しだした。

 先ほどまでの動きが嘘のような、一心同体の連携。


「これは……!」


 間違いない、これはテレパスの動き。

 ここにきて、テレパスを使えるようになったのか。しかも、自分自身も戦いながら!

 しかし、なぜ急に……。

 そう疑問を抱いた俺の視界に、光る臼を挽くフェニアとメニアの姿が映った。

 そうか、グロッティの歌のバフにより、リンクに意識を割く余裕が出来たのか。

 見たところ、ラインを繋げるのは同時に四枚程度が精いっぱいのようだが、それでも他のカードが連携に入れるのは大きい。

 勝利の天秤は急速に彼女へと傾いていき、やがてライラプスが付喪神の刀身を噛み砕いた。

 同時に、糸が切れた人形のように一条さんが、へなへなと力なくへたり込む。


「おめでとう! お疲れ様!」


 俺は駆け寄り、スポーツドリンクを差し出した。

 装備化を解除しながら受け取り、勢いよく呷る一条さん。

 改めて見ると、彼女はまるでフルマラソンを走ったかのように全身にぐっしょりと汗を掻いていた。頬に張り付いた金髪が、ちょっとセクシーである。

 一気にペットボトル一本飲み干した彼女は、ぷふぅーと息を吐き……。


「はぁー! 生き返った!」

「すげーな、実質一人でDランク迷宮踏破じゃん。しかも……」


 俺は地面に落ちたカードに眼をやった。


「まさか、カードもドロップするとは……」

「マジ!? ラッキー!」


 言いながらチラリと蓮華を見るが、小さく首を振って返される。

 ってことは、これは素の運によるものか。

 道中のドロップ率も良かったし、生まれつき運のよいタイプなんだろうか。


「ってことで、はい」

「え?」


 何気なく渡された付喪神のカードを受け取り、俺は首を傾げた。

 そんな俺に、一条さんはニッと笑いながら言う。


「あげる。今回のお礼」

「え? ……いやいやいやいや、さすがに受け取れないわ。俺は手出ししてないし」

「受け取ってよ。元々そういうつもりだったしさ。アタシは、今回手に入れたリンクの技術とDランクカードだけでジューブン」

「いや……やっぱ、受け取れない。俺にもプライドがあるしね」


 契約では、一条さんが一人で倒して得たモノは彼女のモノ。俺の取り分は踏破報酬と、俺が手出しをしたモノという約束だった。

 付喪神に関しては、一言アドバイスを送っただけで、一条さんが一人で倒したのだから、これは明らかに彼女のものだった。

 やっぱ踏破報酬が欲しいと言われても渡せないように、この付喪神を貰うこともできない。


「んー……じゃあ、リビングアーマーとフェニアたちを売ってよ。それなら良いっしょ?」

「フェニアたちを?」

「うん。アタシも、結構コイツらに愛着湧いてきてるしさ」


 そう言って、微笑みあう一条さんとフェニアたち。

 それを見て、俺も少し考えてみる。

 ふむ……。現在の付喪神の市場価格は、四千万円ほどだったはず。

 一方でフェニアたちの市場価格は、大体二千万から三千万の間と言ったところか。

 付喪神をギルドで売った場合の値段は二千万から三千万ちょっとと言ったところだから、一条さんからしてみればギルドで付喪神を売ってから、俺からフェニアたちを買うのも同じということになる……。

 とはいえ、CランクカードとDランクカードでは、ギルドの買い取り価格に大きな差があるのは事実。

 やはり、フェアなトレードとは言い難い。

 なにより、アンゴルモアが迫る中、クラスメイトからCランクを巻き上げるというのは、あまりに気が引ける。

 ……そうだ、こういうのはどうだろうか?


「あー、じゃあこういうのはどうだろう。付喪神とフェニアたちはトレードする。その上で、付喪神を一条さんに新しくレンタルするってのは」

「付喪神を?」

「うん。それで、一条さんが付喪神を欲しくなったら、フェニアたちと同じ値段で付喪神を売るよ。レンタル料も、フェニアたちと同じってことで」


 これならば、そんなに不公平なトレードでもないだろう。


「あー……うー……」


 一条さんは、しばし悩むように付喪神のカードを見ていたが、やはり初めて手に入れたCランクカードには愛着があったのか。


「じゃあ、北川がそれで良いなら……それで」

「うん」

「あー!」


 一条さんが地面に大の字に寝っ転がる。


「これでようやく貸し借りゼロにできると思ったんだけどなー」

「……貸し借りに拘り過ぎじゃね?」


 あるいは、俺に借りを作りたくなかったか。……だとしたら結構ショック。


「単純に、モヤモヤすんだよね。誰かに借りを作ったままだとさー。こう見えても夏休みの宿題はさっさと終わらせてから遊ぶ派なんで」

「あー」


 なるほど、その気持ちは少しわかる。


「ま、俺への借りは、物とか金じゃないので返してよ」

「……もしかして、マジでカラダでのお返し狙ってる?」


 ……ネラッテナイヨ。


 俺はそっと目を逸らしたのだった。




「ん?」


 踏破報酬を回収し、迷宮を出たところで、俺は街が妙に騒がしいのに気付いた。

 街中というのは、常にある程度の喧騒に満ちているものだが、目の前のこれは些か日常のそれと様子が違った。

 どこか焦りがあると言うか、恐怖を感じるというか……。

 そこで、ちょうどポケットのスマホが震えた。

 何気なく画面を見て、ギョッと眼を見開く。


「なんじゃ、こりゃ……」


 携帯の待ち受け画面には、百を超える着信や、SNSの通知が表示されていた。

 これは、いよいよただ事じゃないぞ……。


「……なんかあったん?」

「わからん」


 着信の内、三割ほどはアンナのモノで、俺はとりあえず彼女へと折り返しの電話をかけた。


「もしも『先輩ッスか!?』」


 こちらが一言目を言う前に、食い気味にアンナが叫んだ。


『何してたんスか、もー! ずっと連絡してたんスよ』

「ごめん。迷宮に潜ってたんだよ」

『……休みの日まで潜ってるとか、さすがにヒくんスけど。って、そんなこと今はどうでも良いッス!』


 アンナは、スッと一息吸って……そして、言った。




『――――星母の会が、クダンの予言を発表しました』



 【TIPS】マイナーチェンジ

 同ランクの別種族のカードを消費して種族を変更、同種族のカードでステータスの上書きをすることをマイナーチェンジと呼ぶ。

 ランクアップ同様、元となったカードの容姿の一部と自我を引き継ぎ、熟練度と運次第でスキルを引き継ぐことができるが、後者の同種族による上書きの場合、完全にステータスが上書きされる。

 普通の冒険者にとって余りにメリットが少なく、ランクアップ以上に利用する者が少ないため、その存在自体を知らない者もいる。

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