第359話 花見
花見会場でねぎしおの食べたいものをある程度買い揃えた火月は、
腰を落ち着ける場所を探していた。
というのも、両手が食べ物で塞がっていて、
とても食べ歩きができるような状況では無かったからだ。
ねぎしおに荷物を運んでもらえば多少余裕ができるかもしれないが、
人目が多い中でそんなことをしようものなら、たちまち心霊現象に早変わりである。
前回の扉の修復での恩がある以上、
ねぎしおの
今こうして財布兼荷物持ちの任務を全うしていた。
「一度あそこで休憩しよう。
せっかく買った食べ物も冷めたら旨くないからな」
「う~む。
まだまだ買い足りないが、お主の言うことも一理あるのぅ。
それに、食い終わったらまた買いに行けば良いだけの話じゃしな」
これだけの量を買っておいて、コイツはまだ食べる気なのだろうか……と、
ねぎしおの底なし胃袋に怯えつつ、
人通りの少ないベンチに到着すると、早速腰を下ろす。
「買った物は全部この中に入っているから、適当に食っててくれ」
持参した大きめのビニール袋をベンチの上で広げると、
ねぎしおが待ってましたと言わんばかりの勢いで焼きそばを食べ始める。
火月はつい先ほどまで振動していたスマホを足り出すため、
ズボンのポケットの中に手を入れようとした……が、
とあることを思い出し、その動きを止める。
「そういえば、ずっと聞きそびれていたことがあるんだが……」
「ん? 何じゃ?」
「お前は、どの程度記憶を取り戻したんだ?」
ねぎしおがこちらを見上げたと思ったらゴクンと喉を鳴らす。
「あー、そのことなんじゃがな。
結局、悠久の
「随分とピンポイントだな」
「うむ。より正確な言い方をするなら、
思い出した……というよりも、知りたいと思った情報が頭に降ってきた……
と表現した方が適切かもしれぬ」
「その話が本当なら、お前が望む情報なら何でも手に入るんじゃないのか?
それこそ、失った記憶だって―――」
「そう思ってここ数週間、我も記憶を取り戻せるか何度も試してみた。
じゃが、結局何も思い出せんかった」
ねぎしおが頭を左右に振る。
つまり、あの時ねぎしおがどうやって情報得たのか?
については再現性の無い、偶然の出来事だった……ということになるんだろう。
と少しは期待していたのだが、
ねぎしおのリアクションを見る限り、それも望み薄だろう。
とりあえず地道に情報収集を続けるしかないなと判断した火月は、
ポケットからスマホを取り出し、画面を確認すると
メールを一件受信していることに気づいた。
送り主は水樹さんからだったので、
ファーストペンギンないしラストペンギンの依頼か?と思いつつ、
メールを開いた火月は、その文面から
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