第338話 切迫

蛇の怪物が火月を目掛けて頭から突っ込んできたので、

右側にれるような形で大きくジャンプする。


何とか攻撃を回避できたと思ったのも束の間、

蛇の怪物はすぐに方向を変えて火月の方へ迫ってきていた。


「くそっ!」


壁面に着地した火月は、息をつく暇もなく次の回避行動に移る。


怪物は火月の居場所を目掛けて突撃を繰り返し、

水路の壁面は次々と破壊されていった。


『こいつ……直撃するまで攻撃を続けるつもりか?』


何回も突撃を回避していた火月は、

怪物が攻撃の手を一切止める気が無いことを悟る。


このまま回避を続けていても、いたずらに地形を破壊させるだけで、

ただの時間稼ぎにしかならないのは誰が見ても明らかだった。


だが、自分の攻撃が一切通用しないこの状況で他に何ができるというのだろうか?


怪物の攻撃を回避しつつ、

頭をフル回転させて今の状況を打開する方法を考えていた火月は、

ふと


妙な違和感を覚えた火月は、直ぐに相手を一瞥する。

すると、怪物の口元が大きく膨れ上がっており、

まるで狙いをつけるかのように頭だけを火月に向けて動かしていた。


『まさか……』


なんとなく、次の攻撃に察しがついた火月は

大きく穴が開いた水路の壁面に向かって走り始める。


とにかく今は、自分の身を隠せる場所に移動しなければならなかった。


『あと少し、あと少しだけ待ってくれよ……』


つい先ほど怪物が放った強烈な火炎放射が脳裏をよぎる。


いくら自分が回避能力に優れていたとしても、

あの広範囲かつ高火力の攻撃を避け切るのは至難の業だろう。


もうすぐ目的地へ到着すると思い、安堵した火月の真後ろには

全てを呑み込もうとする激しい火の手が差し迫っていた。


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