第296話 お守り
通話が切れたのを確認した早見は、
今しがたメンテナンスを終えた黒いリングを手に持ち、
ベッドで仰向けになっているねぎしおに声を掛ける。
「食事の方は満足してもらえたかい?」
「う……うむ、もう食えぬぞ」
お腹がぱんぱんに膨れ上がり声を出すのも辛そうなねぎしおが、
やっとの思いで返事をする。
「それなら良かったよ」
ねぎしおの右足にリングを装着しようと、
早見が手を動かしながら話を続ける。
「そういえば、ついさっき入った情報なんだけどね。
中道君が傷有り紅三の扉の修復を完了したらしいよ」
「何じゃと?」
横になっていたねぎしおが心底驚いた様子で飛び起きる。
「
もちろん、彼一人で対処したわけではなくて、
他二人の修復者と一緒にって感じみたいだ」
「そうじゃったか……。して、全員無事なのか?」
「一応、全員実界には戻ってきたらしいね。
この目で容態を直接見たわけじゃないから
詳しいことはわからないけど、
さっき、僕の配下の医療班を現地に送っておいたから大丈夫さ」
「……」
深刻な様子で黙りこくってしまったねぎしおを早見が一瞥する。
「彼のことが心配かい?」
「べ、別にそんなわけなかろう!」
「いやぁ、君たちは本当に見ていて飽きないね。
ただの修復者と一匹の怪物の関係でしかないのに、
まるで長年連れ添ったパートナーのようだ」
「我の世話をする下僕がいなくなったら困ると思っただけじゃ。
別に深い意味はない」
「確かに、君のお世話を毎日するのは僕も骨が折れそうだ」
「何が言いたいんじゃ?」
ギロリとねぎしおがこちらを睨んできたので、
口笛を吹いて適当に誤魔化す。
「よし、とりあえずこれでメンテナンスは完了だね」
ねぎしおの右足付近からガチャリと音が聞こえ、
黒いリングが装着されたのを確認した早見は満足げに呟く。
「ようやく終わったようじゃな。
ちなみに、このリングには何の意味があるんじゃ?」
「簡単に言えば、お守りみたいなものさ。いざって時は神頼みってね」
「機械をいじってる
こちらの嫌味に対し、クククと笑っている白衣姿の彼女を見て、
相変わらず掴みどころのない研究者だなと再認識したねぎしおだった。
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