第290話 死闘
バチバチと白い火花のようなものを撒き散らし、
地面の文字盤から得物を思いっ切り引き抜く。
それは、いつも火月が扱っている短剣ではく、
二尺ほどはありそうな紅葉色の刃を持つ薙刀と
十字花刺しの文様が入った盾の複合武器……言うなれば、盾薙刀だった。
「うおおおおお!」
右目が鉄紺色に変色した火月が叫ぶと、
その場で再度薙刀を地面に突き刺す。
すると、持ち手を覆っていた盾がそのサイズを大きくし、
高さ、幅共に三メートル近くまで巨大化した。
直後、熱光線が渦を貫通し、火月の盾と真正面からぶつかり合う。
「ぐっ!」
得物を支えている腕が吹き飛ぶんじゃないかと思うくらいの衝撃が全身を襲い、
盾を構えた状態で二メートルほど後退させられる。
その後もジリジリと後ろに移動させられていたが、
盾が手に馴染んできたタイミングで完全に動きが静止した。
何とか攻撃を受けることに成功したものの、
怪物の光線は未だ勢いを維持したままである。
「ここを通す訳にはいかないんだよ!」
歯を食いしばって両腕と両足に力を入れると、
全神経を盾に集中させる。
すると、火月の思いに応えるかのように十字花刺しの文様が白く光り始め、
盾がその強度を増していく。
それはまるで、防御力を一時的に向上させる能力が
懐中時計に備わっているかのように思えた。
『
いくらヒトデの怪物が傷有り紅三の怪物だからといって、
この熱光線を撃ち続けられるほどのエネルギーは持ち合わせていないはずだ。
相手の光線が火月の盾を貫くのが先か?
それとも火月の盾が攻撃を耐え抜いて、怪物がエネルギー不足になるのが先か?
死力を尽くした真っ向勝負は
誰にも予想できない局面を迎えようとしていた。
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