第287話 スリーフォールド・レピティション

とにかく相手の攻撃を避けることだけに集中していた火月は、

もうそろそろ三分が経過しようとしていることに気づく。


二体の怪物の攻撃は確かに威力が高く、

回転速度が落ちる気配を一切感じさせないものだったが、

一方で軌道が読み易い、シンプルなものでもあった。


もちろん、時計の能力を発動していなければ、

二体の連撃を避けることは至難の業だろう。


つまり、何が言いたいのかというと

今のところ回避は出来ている……が、

逆に言えば回避しかできない、膠着状態にあるということだ。


だが、この状況は時間稼ぎが目的の火月にとって願っても無いものだった。

別に勝つ必要は無い、負けなければいいだけの話だ


『ずっとこのままでいてくれよ……』


これ以上、相手の攻撃が過激にならないことを祈っていた火月だったが、

その希望は直ぐに打ち砕かれる。


二体の怪物が突如回転を止め、

少し離れた場所で重なり合うような動きを見せたと思ったら、

全長六メートルほどの一体のヒトデに姿を変えた。


『合体したのか?』


おそらく、これが本来の姿というやつなんだろう。


先ほどの回転攻撃を繰り返しても無意味だと判断し、

新しい攻撃方法を試すための変化……といったところか。


身体の中心から伸びている五本の腕の先端には、

それぞれ珠が埋め込まれており、

その内の一つが黄色に点灯する瞬間を火月は見逃さなかった。


『計五個の珠の内、黄色に点灯しているのは四つ……』


これが何を意味するのかはわからなかったが、

凄く嫌な予感がしていた。


『何にせよ、これまで以上に気を引き締める必要がありそうだ』


そう思って怪物がいる方へ視線を向けると、

珠が黄色に点灯しているそれぞれの腕の先端に、白い光が集まっていた。


直感的に身の危険を感じた火月は、

新たな攻撃に備えるために、

装置が密集している場所へ隠れるように移動する……と

程なくして、怪物から四本の熱光線が音も無く解き放たれたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る