第277話 手裏剣

「そういえば、ヒトデは強い再生能力を持つらしいです」


思い出したかのように山内がひとりでに話始める。


「再生能力?」


この状況でまたヒトデの薀蓄うんちくかと思った志穂は、

周囲を警戒しつつも彼の話に耳を傾ける。


「はい、種類によっては腕の一本から身体全体を完全に復元できるんだとか。

 ちなみに、ヒトデは自在に身体を自切じせつすることもできるようです。

 身体を分裂させることで危険から身を守っているのでしょう」


「なるほどな、道理どうりで手応えがなかったわけだ」


志穂がヒトデの怪物を切り刻んでいたわけではなく、

切り刻まれる前に怪物が自ら切断していた……ということなんだろう。


「ただ、それにしたって再生が早すぎるとは思いますけどね」


「そこは例のごとく、怪物だからってことなんじゃねぇのか?」


「えぇ、おそらく」


周りを浮遊していたヒトデの怪物が、突然その場で高速回転を始める。

攻撃を仕掛ける準備段階に入っているのは誰が見ても明らかだった。


「さすがにちょっとまずいかもしれねぇな。範囲が広すぎる」


二十体近くの怪物が四方八方から攻めてきたら、

自分の身を守るので精一杯だろう。


「お前、自分の身は自分で守れるか?」


「なんとかやってみますよ。

 頼りなく見えるかもしれませんが、藤堂さんの後ろは任せてください」


「あぁ、期待しないでおく」


背中合わせになった志穂と山内は、

自分の視界に入る怪物に集中し、得物を構える。


こちらが話終えるのを待ってくれていたのか、

ほどなくして怪物が一斉に飛んでくる。


それはまるで、機械式の光る手裏剣のような攻撃だった。

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