第268話 逆襲

怪物の回転スピードが徐々に落ちていく。


プシューと音を立て、

白い蒸気のようなものを全身から吹き出したかと思ったら、

微動だにしなくなった。


引き続き、真上から怪物の観察を続けていた志穂は、

回転が止まった原因を考える。


『十分距離が空いたからなのか、はたまた回転時間が決まっているのか……』


あれだけの回転スピードを出すには、かなりのエネルギーが必要なはずだ。


あの怪物が一般的な機械と似たような構造をしているなら、

必ず内部に熱が溜まっているだろうし、

一定の温度に達したら回転が止まるような仕組みになっていてもおかしくない……

と、そこでふとある考えが頭をよぎる。


『もしかして、オーバーヒートしてるんじゃ』


単に冷却機能が追い付かず、

動作不良を起こしている可能性も捨てきれなかった。


いや、むしろそう考えるのが自然だ。


だったら、今こそ攻撃をしかける絶好のチャンスと言えるだろう。


静止している怪物に狙いを定め、

脚に力を入れて一気に飛び出そうとした次の瞬間、


何が起きたのか理解できず、ゆっくりと後ろを振り向くと

天井の一部に丸い穴が空いており、周りが赤熱化していた。


『嘘……でしょ』


全身に緊張が走る。


たまたま当たらなかったから良かったものの、

高温の熱光線攻撃は完全に自分を狙っていた。


回転ができなくても別の攻撃手段が残っているということなのだろう。


むしろ、こっちの攻撃の方がやっかいかもしれない。

そう思った志穂は相手の攻撃する瞬間を見逃さないように意識を集中させる。


ヒトデの怪物の腕に埋め込まれている白い珠が、

また一つ黄色に点灯していた。


それはまるで、今度はこちらから攻撃を仕掛けるぞ……

と合図を送っているかのように見えた。

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