第253話 お叱り

「ん? ここは何処じゃ……?」


目覚めたばかりのねぎしおがベッドから起き上がると、

キョロキョロと周りを見渡す。


「どうやら命は助かったらしい」


声のする方へ視線を向けると、火月と目が合った。


「命? お主は一体何を言って――」


そう言いかけたねぎしおは、

ついさっきまで自分たちが置かれていた状況を思い出し、

言葉を詰まらせる。


「あぁ、思い出したぞ。

 お主が我を穴の中へ突き落とそうとしたその愚行、

 絶対に許さぬからな!」


「そうだったか?

 まぁ、結局二人一緒に落ちたんだから、細かいことは気にするな」


「何じゃと!? 

 あの状況で振り落とされそうになった我の気持ちをないがしろにするつもりか!

 そもそも、お主はもっと他人の気持ちを―――」


ねぎしおがプリプリと怒り出し、説教が始まる。


こういう時の対処法は、とにかく相手の言葉をさえぎらないことだ。

自分はただ聞き役に徹するだけでいい。


仮に自分に非が無くても、一度全部受け止める。

最悪、内容は右から左に聞き流しても問題ない。


あとは、相手が言いたいことを全部言い終えたと思ったタイミングで、

謝罪しておけば大体何とかなる。


「俺が悪かった。すまない」


「ふん、今はこれくらいにしておいてやろう。

 今後はもっと我に敬意を払うように気をつけるがよい」


数分間に渡るお叱りタイムが終わり、

スッキリした様子のねぎしおが話を続ける。


「して、何故命が助かったのじゃ? 

 そもそも、あの怪しげなやからが我らを突き落とさなければ……」


再びねぎしおの怒りのボルテージが上がっていくのを感じた火月は、

急いでこと顛末てんまつを話し始めたのだった。

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