第236話 リスタート
「もう少しゆっくりしていってもいいのに」
玄関で靴を履き終えた
「いえ、これ以上はご迷惑になりますから。
それに私もやらなきゃいけないことがありますので」
「……なら仕方ないね。
久城さん、今日
「そうですね。
予想外のサプライズはありましたが、やっぱり来て良かったと思います。
先生、今日はありがとうございました。
それと、もう若くないんだから身体には気をつけてくださいね」
「おっと、これは手厳しい。肝に銘じておくよ」
小さく会釈をした伊紗は振り返って玄関のドアノブを握る……
と同時に後ろから先生の声が聞こえた。
「そういえば、
匿名の方から施設宛てに学用品や日用品の寄付が届くようになったんだ」
「……そうだったんですね。でも、どうしてその話を私に?」
ドアノブを握ったまま伊紗が答える。
「うーん、何でだろうね。
でも、私はいつかその人……
いや、その人達に直接お礼を言いたいなぁと思ってるんだ。
だから、その時が来るまでは健康でいるつもりだよ」
「……私も見習わなきゃですね。
それじゃあ、行ってきます!」
「あぁ、行ってらっしゃい」
ドアを開け、白い光の中へ消えていった伊紗の隣に
もう一人見覚えのある女性の姿を見た初老の男性は、思わず息を呑む。
自分の錯覚かもしれないが、その二人の
そして、頼もしいものだった。
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