第230話 行雲流水

一体、自分は何のために生きているのだろう……

誰しも一度は、そんなことを考えたりするものだと思う。


人によって『生きがい』というものが多種多様であることは重々理解しているが、

それでも明確に、これが私の生きがいだ!と自信をもって言える人に対し、

私は羨望と尊敬の眼差しを向けている。


食べること、お酒を飲むこと、旅行に行くこと、

好きなゲームや漫画に没頭すること、子供の成長を見守ること、

ペットと過ごすこと等、

きっと自分が想像している以上に

世の中の人は、日々生きがいを持って生活を送っているのだろう。


当然そこに貴賤きせんなどなく、自分自身が納得できるものであればいいはずだ。


ただ、全員が全員

その『生きがい』とやらを持っているわけではない。


何の目的も生きがいもなく、時の流れるままに過ごしている人間は一定数存在する。少なくとも中道 火月はそっち側の人間だ。


そんな人間を見て、世の中の人はどういう印象を持つだろう。

いい大人がみっともない、そんな人生つまらない……

あなたもそう思うだろうか?


学校ではよく、生徒に対して将来の夢について問いかけるシーンが多いが、

その様子は誰もが自分の将来の夢をもっていてさも当然

かのような空気を孕んでいる。


つまり、将来の夢は持つものではなく、持たなければならないものなのだ。


そして、大人になって社会に出ても、似たような経験をすることがある。


特に会社員に多いとは思うのだが、

自身の評価制度の一つとして、仕事の目標を設定することがある。


もちろん、目標がある人は問題ないと思うが、

やはり大人になっても目標がない人間は存在する。


しかし、そこに拒否権は存在しない。

目標もまた、設定するものではなく、設定しなければならないものなのだ。


夢を持つこと、目標を設定すること、そして生きがいを見つけること、

それらはきっと、自分の人生を豊かにしてくれるものなのは間違いないだろう。


十分理解できる……が、

必ずしも全員にとって必要不可欠なものではないということも覚えておいて欲しい。


ただ、毎日を必死に生きること、

自分の存在理由を死ぬまで考え続けること、

そんな人間は意外と身近にいたりするものだ。

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