第134話 鉄壁

ジャンプ移動を繰り返し、火月と巨大な枝の間に入り込んだ礼一は、

得物の盾の部分で防御の構えを取ると自身の能力を発動させる。


持ち手の盾が二回ふたまわりほど大きくなると同時に、

怪物のドリルのような攻撃が直撃する。


激しい音と共に火花が飛び散り、

衝撃波のようなものが周りに広がっていく。


空中であれだけ勢いのある攻撃を受けたら、

いくら盾で防いだとしても吹き飛ばされるのが関の山だ。


しかし、礼一の盾はその怪物の攻撃を


礼一が後ろに押されている気配は一切なく、

まるで強固な壁がそこにあるかと思うほどだ。


というのも、礼一の時計の能力は一時的な耐久力の向上で、

簡単に言えば防御力が増す力である。


つまり、防御こそが彼の得意分野であり、

今のこの状況は礼一にとって至極当然の結果だった。


後ろにいる火月の状況が気になるところではあったが、

今は怪物の排除が最優先だ。


ドリルのような枝の勢いが完全に停止したのを確認すると、

そのまま盾で押し返す。


全ての力を出し切ったのか、枝が反対方向へ大きく傾く。

すると、大輪の花が視界に映った。


再び花粉の攻撃がくるかどうかわからなかったが、

枝の再生に時間がかかる件を考慮するなら、

おそらく何度も繰り返し出せる技ではないだろう。


ならば、今こそ攻めのチャンスである。


過程がどうであれ、火月が先行して攻撃を仕掛けてくれなかったら、

この状況を作り出せなかったはずだ。


予想外の出来事には驚かされたが、後は自分の役割を果たすのみ。


花托と思われる部分まで一気に距離を詰めると、

そのまま勢いよく得物を振り払った。

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