第126話 環境

軽い休憩を取った火月達は、川沿いの道を進んで行く。

歩けば歩くほど、怪物の気配が強くなっていくのを肌で感じた。


右手には川、左手にはジャングルといった構図がしばらく続いていたが、

次第に変化が現れ始める。


「これは一体……」


隣を歩いていた元田さんも視界の変化に気づいたようで、

左手に見える景色を凝視していた。


そこは、先ほどまで青々とした植物が生い茂っており、

先が見通せないジャングルのような場所だったのに、

今はその植物のほとんどが黄色や黒に変色して枯れていた。


視界は一気に開け、地面には枯れて小さくなった植物がこうべを垂れている。


「怪物へ近づくにつれて、周りの植物が枯れているようだね」

元田さんが顎に手を当てて一人呟く。


「そうですね。

 自分の勘違いかもしれませんが、

 前回来た時よりも範囲が広がっているような気がします」


以前怪物と対峙した時の記憶を思い出す。

確か、もっと怪物の近くで植物が枯れていたはずだ。


「なるほど……。いずれにしても、

 怪物の存在が周りの環境に影響を与えているのは間違いなさそうだね。

 それに、火月君の言うことが事実なら急いだ方がいいかもしれない。

 嫌な予感がするんだ」


そう発言する元田さんの口調は穏やかではあったが、

何処か緊張しているようにも見えた。


「わかりました。ここから先は、枯れた道の方へ向かいます。

 おそらく、あと五分も歩けば怪物に出会えると思いますので、

 お互い得物は出しておいた方が良いかと」


「了解だよ。備えあれば憂いなしだね」


元田さんが胸ポケットから鉄紺色の懐中時計を取り出すと、

足元にローマ数字の時計の文字盤が浮かび上がる。

懐中時計が白く光り始めたと思ったら、眩い閃光が周りを包み込んだ。

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