第112話 ギャップ
要が上京して、一番最初に驚いたのは『人の数の多さ』である。
電車が駅に到着した途端、
一斉に人がホームへ雪崩れ込んでいく様を目にした時は、
何かお祭りでもやっているのかと思ったほどだ。
要の地元は無人駅だったので、
様々な商業施設が併設されている都会の駅に人が集まるのは、
ごく当たり前のことなのかもしれないが……。
また、夜もお店がやっていて、人が活動していることにも衝撃を受けた。
地元にいた時は、
日が落ちたら周りが見えなくなるくらい真っ暗になっていたのに、
こっちは、まるで昼間の延長戦をやっているのかと思うほどの明るさを放っていた。
ちなみに、同年代と思われる人々が夜の街に繰り出していく姿を見た時に、
住む世界が違い過ぎると思ったのは言うまでもない。
正直なところ、不安しかなかった。
大学の入学式は明後日なので、
事前に住む場所の周りに何があるのかを把握しておきたかったし、
通学のルートも確認しておく必要があった、
以上の理由から今日も外に出掛けていた要だったが、
相変わらずの人の多さにうんざりする。
『これに慣れる日は来るのだろうか……』
そんなことをぼんやりと考えながら、駅のホームに立ち尽くす。
ゆっくりと電車が停車すると、
滑り込むように乗り込み、車窓から外の景色を眺める。
高層ビルの間から顔を覗かせる空は、どこか窮屈そうに見えた。
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