第105話 分水嶺

火月が目指した場所、

それは窓枠から日の光が入って来る場所に他ならなかった。


要が飛ばされた場所も火月が今いる場所と同じように、

日の光が差し込んでいた。


そして、そこにいる時にだけ怪物は攻撃をしてこないことを

身をもって証明した火月は一つの結論に辿り着く。


『日光か……』


この危機的状況をひっくり返す情報となり得るかどうかわからなかったが、

日光が怪物の苦手なものだと分かっただけでも御の字だ。

ならば……。


「ねぎしお、一つ頼みを聞いてくれるか?」


「何じゃ?」

肩から飛び降りたねぎしおが火月を見上げる。


「これから要に最後の作戦を伝えに行く。

 だが、今この場所を離れたら間違いなく俺に攻撃が来るだろう。

 正直なところ体力も限界に近い。

 怪物の攻撃を避けるのもギリギリになってきた。だから――」


「皆まで言う必要はない。

 お主が要の元に辿り着くまで、我が怪物の注意を引けば良いのじゃろう?」


「あ、ああ。その通りだ」

あまりにも察しが良いので、少し驚く。


「任せるがよい。

 そもそも要が怪物の攻撃を受けたのは我の責任でもある。

 じゃから、お主はお主のやるべきことをやるんじゃ」


ねぎしおが言い終わると同時に、日の当たらない場所へ飛び出した。


「おい、そこの怪物よ! 今度は我が相手になってやろう!」


怪物の目がギョロリと動いたと思ったら、

長い舌がねぎしおの移動する方へ伸びていく。


危なっかしくも怪物の攻撃を避けている姿を見る限り、

危機察知能力の高さは健在のようだ。


『何とか持ちこたえてくれ……』と心の中で祈りつつ、

要が待つ場所へ向かい始めた火月だった。

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