第104話 光
要が休んでいる場所から離れると、怪物の長い舌が火月に向かってくる。
どうやら、狙いを変えたようだ。
無防備な状態の要を攻撃しない理由については、
おおよその検討がついていた。
自分の予想が正しければ、要を一人で放置していても問題ないだろう。
なぜなら、怪物は攻撃をしたくても攻撃できないはずだからだ。
鞭のようにしなる舌が連続で攻撃を仕掛けてきたが、
後方へジグザクに移動して回避する。
攻撃の間合いから外れてしまったのか、
怪物が大きくジャンプして火月の目の前まで一気に距離を詰めてきた。
「そっちから来てくれるなら、近づく手間が省けたぞ」
右手の短剣を握りしめ、四度目の攻撃を仕掛ける火月だったが、
今までと同様に怪物の姿が
何処から姿を現し、攻撃を仕掛けて来るのか皆目見当がつかなかったが、
それでよかった。むしろ、怪物の姿が消えるのを待っていたと言ってもいいだろう。
あとは……。
とある場所を目指して移動を始める。
全力で走っていると、左肩にねぎしおが飛び乗ってきた。
「火月よ、怪物の居場所については我に任せるがよい」
「ああ、それは助かる。ちなみに、今何処にいるか教えてくれるか?」
「うむ、後ろからお主を追いかけてきているようじゃな」
「それだけ分かれば十分だ」
後ろを振り向くことなく真っすぐ走り続ける火月に対し、
ねぎしおが慌てた様子で話しかけてくる。
「あやつ、長い舌を伸ばしてきたぞ!
このままじゃ、あと数秒でお主に直撃するかもしれぬ!
走るのを止めて、さっさと攻撃に備えるのじゃ!」
ねぎしおの呼びかけを無視して、そのまま前方にスライディングをすると、
目的の場所に辿り着く。
「大丈夫だ、きっと攻撃は届かない」
前を向いたまま、ねぎしおに声をかける。
透過状態を解除した怪物の長い舌は、
火月の背中の手前まで真っすぐ伸びて来ていた。
その距離、僅か数センチ。
だが、要の時と同様に怪物の舌は微動だにせず、静止していた。
「やはり、そういうことか……」
一人納得した様子の火月が、その場から立ち上がると、
ゆっくりと後ろを振り返る。
そこには、窓枠から差し込む日の光に照らされた火月が、
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