第101話 コンビネーション

「それじゃあ、作戦通り頼む」

要とねぎしおに向かってそう言い放つと、怪物が落下した場所へ走り出した。


「要よ、我らも行くぞ」

ねぎしおが要の右肩に飛び乗る。


「今度こそ、必ず仕留めるっす!」

怪物の後ろへ回り込むため、要たちも移動を始めた。


土煙が収まり、火月が向かう正面には、

相変わらずの体勢で怪物がこちらを睨んでいた。


ある程度の距離まで近づくと、怪物が長い舌を使って攻撃を開始する。


「もう、その攻撃は当たらないっての」

左右に素早く移動し怪物の攻撃をかわした火月は、あっと言う間に距離を詰める。


「今度はこっちの番だ」

右手に握った短剣をそのまま振り抜くが、当然攻撃は当たらない。


「怪物の姿が消えた! あとは頼んだぞ!」

要たちが待機している方へ向かって叫ぶ。


「要よ、二時の方向、前方三メートルの位置に攻撃じゃ」


「了解っす!」


ねぎしおの指示通りに動き始めた要は、そのまま所定の場所に到着すると、

棍を思いっきり振り回した。


「おしいぞ、あと少しで当たりそうじゃな。

 今度は九時の方向、前方四メートルじゃ」


「合点承知!」


休む暇もなく要の猛攻が続く。


今回の作戦は至ってシンプルなものだった。


火月が怪物の注意を引いて、姿が消える直前まで担当する。

姿が消えた後は、

ねぎしおが要の目となって、怪物へ攻撃を仕掛けるといったものだった。


傍から見ると何もない空間へ攻撃を繰り返しているように見えるが、

ねぎしおが消えた怪物を認識できるのなら、

間違いなく相手を追い詰めているはずだ。


ねぎしおと要の信頼関係が肝になる作戦なので、

上手くいくか不安ではあったが、どうやら杞憂だったようだ。

自分とねぎしおだったら、絶対に上手くいってなかったに違いない。


端へ端へ移動していく要を見ると、どうやら怪物を壁際に追い込んでいるらしい。


「要よ、もう怪物は後ろに移動できぬ。

 つまり、左右か上に逃げるしかない状態じゃ。

 これは我の勘じゃが、おそらく、怪物は上にジャンプして攻撃を避けるじゃろう。

 じゃから、さっき話した通り先手を打つぞ!」


要が小さく頷くと、

そのまま目の前の空間に向かって棍を真横に振り回す……かと思いきや、

攻撃の手を直前で止めて、そのまま上に向かってジャンプした。


「やはり、我の目に狂いは無かったようじゃな。

 まんまとフェイントに引っ掛かりおったわ。

 怪物あやつもまさか同じタイミングでジャンプするとは思うまい」


「うおおおおおお!」


要が両手で棍を強く握りしめると、

目の前を飛んでいるであろう見えざる怪物に向かって、

その獲物を振り下ろしたのだった。

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