第94話 不意打ち

壁にできた穴の近くまで移動した三人は、その先を凝視する。

そこには、この遺跡の中で一番広いと思われる空間が広がっていた。


「隠し部屋といったところか……。にしても、怪物の姿は見当たらないな」


「でも、絶対ここにいるはずっす。一旦降りてみた方が良さそうっすね」


何の躊躇いもなく、要が下に向かって大きくジャンプする。

難なく着地に成功すると、周りをきょろきょろ見渡していた。


「今のところ、怪物の気配は感じないので大丈夫っす!」

と要がこちらを見上げ、手を振っていた。


その大胆不敵な行動っぷりは流石だなぁと感心しつつ、火月も要の後に続く。


ざっと確認した限り、周りに柱や障害物の類のものは一切無く、

広さ的には学校の体育館くらいはありそうな場所だった。


両側の壁には、窓枠のようなものが等間隔で並んでおり、

そこから日の光が差し込んでいた。


いずれにせよ、この部屋にも細心の周囲を払う必要があるだろう。

何も無いが故に、大量の罠が仕掛けられているのではないか

と疑心暗鬼にならざるを得なかった。


「やっと怪物のいる場所が特定できたと思ったんすけどねぇ」

正面に立つ要が、顎に手を当てて眉間にしわを寄せていた。


「きっとこの部屋にも何か仕掛けがあるはずだ。

 まずは、部屋の内部を注意深く散策してみよう。

 もしかしたら、怪物の気配が消えた理由もわかるかもしない」


「今できるのは、それくらいしか無さそうじゃな」


「そうっすね。

 それじゃあ、各自何か見つかったら報告する方針でお願いするっす!」


三人が同時に頷くと、突如、怪物の強い気配を感じる。


急いで視線を向けると、

要の真後ろに高さ4メートルはありそうな、巨大なカエルが姿を現した。


「要、後ろじゃ!」


ねぎしおも怪物の姿が見えたようで咄嗟に叫んでいたが、

要が後ろを振り向くよりも早く、怪物の口から長い舌が勢いよく伸び、

そのまま彼をなぎ払った。

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