第88話 再会

ねぎしおとはぐれて三十分近くが経過した。


床の穴に落ちていくところまでは確認できたが、

無事かどうかまではわからない。


流石に後を追うのは自殺行為なので、

そのまま一人探索を続けることにした火月だったが、

相変わらず至る所に罠が仕掛けられているようで、

怪物を相手にするのと同じくらい神経が擦り減っていた。


一人で探索するだけでも精一杯なのに、

もし、ねぎしおと一緒に探索を続けていたら命がいくつあっても足りないだろう。

ある意味、逸れて正解だったのかもしれないなと思った。


ただ、このまま合流できなかったらと思うと少し気が重い。


それは決して、

ねぎしおを守れなかったという自責の念に駆られていたからではなく、

月々の臨時収入が減ってしまう可能性を考慮していたからだ。


ラストペンギンの仕事はファーストペンギンの仕事よりも報酬が良い。

だから、今回も仕事を引き受けたのだが、

ねぎしおが喪失した場合の損失も考えておくべきだったなと今になって後悔する。


とりあえず、ミイラ取りがミイラになったら元も子もない…

自分の命があるだけまだマシだと思うことにした火月は、

遺跡の中を注意深く進んで行く。


探索を続けていく中で、一つ分かったことがあるとすれば、

やはりこの遺跡にも怪物がいるということくらいだろう。


少しずつではあるが、気配が強くなっていくのを感じる。


真っすぐに伸びた道は、ちょうど数メートル先で丁字路になっており、

道が左右に分かれていた。


どちらに進むべきか左右の道を確認する。


左の道は直ぐ行き止まりになっているようだが、

トリモチのようなものが床一面に広がっていた。


とはいっても、この遺跡に来てから一番わかりやすい罠だったので、

ここまで進んできた人が、こんな単純な罠に引っ掛かるとは到底思えないが…。


よって、選択肢は右の道しか残されていなかった。


丁字路を右に曲がり、そのまま直進を始めた火月だったが、

突如後方から大きな叫び声が聞こえる。


「ぬわあああああああああ!」


どこか聞き覚えのある声だったので、急いで後ろを振り返ると、

視線の先、ついさっきトリモチの罠を確認した場所の天井に、

円形の紋章が浮かび上がる。


そこから一羽の鶏と一人の青年が突然姿を現したと思ったら、

そのまま床に向かって落下していった。

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