第80話 遺跡
第一印象は、
何処かの世界遺産にでも登録されていそうな古い建造物…といったところか。
扉の先に広がっていたのは、
象牙色のタイルを床から天井にかけて敷き詰めた小さい部屋のような場所で、
壁にはガラスの
そのおかげで、外から光が差し込み、
照明がなくても部屋の明るさを十分維持できているようだ。
所々タイルが割れている箇所はあったが、
それでも建物自体はまだ輝きを失っていない、そんな感想を抱いた。
「探索し甲斐のありそうな場所じゃな」
丸枠のドアを取り付けられそうな、部屋の出口と思われる場所を見ながら、
ねぎしおが呟く。
おそらく、今いる場所以外にも似たような造りの部屋があるのだろう。
今のところ、怪物の気配は感じないので、まずは周辺を散策する必要がありそうだ。
古い迷宮のような建物を移動する未来が容易に想像でき、
まるで遺跡探検家、トレジャーハンターにでもなった気分だった。
「ここからの景色は最高じゃぞ!」
いつの間にか、ねぎしおが窓枠へ飛び移り、外を眺めていたので後を追う。
少しでも異界の情報を得られればと思い、
窓枠から顔を出すと、その予想していなかった状況に思わず目を見張る。
視界の先には、青い空がどこまでも広がっており、
眩しいほどの太陽が
何となく下を見下ろすと、白い雲のようなものが見える。
いや、正確に表現するなら、雲のようなものしか見えなかった。
自分の見間違いかと思い、一度頭を引っ込める。
もしかしたら、思っていた以上に疲れが溜まっているのかもしれない。
この仕事が片付いたらゆっくり休もうと決めた火月は、
念のためもう一度窓枠から顔を出す。
…
……
やはり、見間違いではなさそうだ。
心なしか、建物自体がゆっくりと動いているような気がする。
頭の中を整理し、一つの結論に至る。
要するに、火月達がいるこの場所は、
地面が見えないほどの高さで浮遊している建物、謂わば空中の遺跡だった。
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