第46話 向日葵

「中道さん、この資料について質問があるんですけど」


自席で仕事をしていると、藤堂がノートパソコンを片手に話しかけてくる。


北大路が抜けてしまった今、

彼女の教育係の後釜として火月に白羽の矢が立ったのは、

昨日の会議後の出来事だった。


正直、誰かに何かを教えるのは得意な方ではないので、

不承不承ながら引き受けたが、

彼女の理解力に助けられ、

言葉足らずになりがちな火月でも何とか役目を全うできていた。


質問の内容に対して、なるべく簡潔に応えると

「わかりました。教えて頂きありがとうございます」

と明るい笑顔を向けてくる。


自席に戻っていく途中も、何度か他の社員に声を掛けられているようで、

談笑する声が聞こえてきた。


移動してきてまだ日が浅いにも関わらず、

既に火月よりチームに馴染んでいるのは間違いないだろう。


愛嬌のある顔立ちと持ち前の快活な性格が相まって、

チーム全体の雰囲気を明るく維持できているのは、

彼女のおかげといっても過言ではない。


組織において、

北大路や藤堂のように周りと上手くやっていける、

調和がとれるタイプの人間の存在は貴重だ。


会社の人選もあながち馬鹿にできないなと思いつつ、

キーボードの上で止まっていた手を動かし始めた火月だった。

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