STAGE 3-6;遊び人、お姫様の職業に共感する!
「【
そんな、ゲームの世界であれば
元ゲーマーのアストは目の奥を仄かに煌めかせた。
「リルハムは知っていたか?」
「うーん、リルの記憶にはないかなー」名前を呼ばれた狼少女リルハムは顎に指先をあてながら、「でもでもー……もしそれが、本当に古代の先に
神様でも
彼女はあっけらかんと言った。
「……そうか」
そんな軽い口ぶりだったからこそ。
余計に【世界喰イ】の強さが嘘偽りのない〝真実み〟を帯びた。
リルハムは悪魔とはいえ、意味のない嘘はつかない。
それになによりも、嘘が下手だ。もしこのことが事実でないなら、口ぶりや態度からすぐにバレていただろう。
「しかし、そんな
アストは、自分自身の化け物具合は棚に上げて、そんなことを問うた。
クリスケッタは首を振って、「セカイグライの目的はあくまで、世界樹が千年間にわたり、大地から吸い上げ溜め込んだ魔力の結晶――〝世界樹の蕾〟それだけだ。千年に一度つけるその蕾を、セカイグライが眠る【
つまりは、世界は滅びずに済む、とクリスケッタは付け足した。
「世界樹の蕾を奉納するにあたっての一連の行事こそ〝
〝捧蕾祭〟――エルフの種族を象徴する、世界に関わる祝祭だと彼女は言っていた。
「ふむ。その捧蕾祭とやらに、お前の妹が関与しているんだな」
アストの中で、絡まった糸がほぐれるかのように。
これまでのエルフにまつわる
「まさしく。世界樹が蕾をつけるためには、妹の力が必要なのだ」
クリスケッタは重々しく頷いてから、張り詰めた表情で続ける。
「『
「ほう。お前の妹は、文化職持ちか」
アストが意外そうな声を出した。
『文化職』――生活や戦闘に直接関わる魔法を扱うことができず、他の職業より下に見られる『下級職』。
〝職業〟で人となりを判断されるこの世界において、『文化職の力が種族をあげて〝必要〟とされること』自体が珍しく思えた。
実際、アストはその『下級職』すら下回る『
(本人はそのことを特にまったくこれっぽっちも気にしていないが)
だからこそ、そのあとにクリスケッタが小さく言った『妾は妹と違い――
「貴殿ら外部の種族が思うよりも、捧蕾祭は我々にとって特別な祝祭であるのだよ。古来より神から
『それは』『神聖なる』『儀式なのだよ』と彼女は、ことの偉大さを強調するように繰り返した。
「ふむ。なるほど」アストは頭上の髪の毛をぴこぴこと動かしながら、「その千年の節目が〝今〟なんだな」
クリスケッタは重々しく頷く。
「あと二十日ほど――次の〝満月の夜〟が、その時だ」
「二十日! もうちょっとだねー」と、まさにお祭りを楽しみにする子供のようにリルハムが言った。
「「き、貴様! 我々の気も知れずに……!」」それまで黙っていたエルフの兵士たちが、耐え切れないように言った。
「よいのだ」しかしクリスケッタはそれを制して、「祝祭とあるように、我々にとっても当然めでたい行事だ……本来であれば、な。千年という大きな節目に立ち会えることも相まって、妹の
彼女の説明に、エルフの兵士たちもどこか複雑そうな表情を浮かべる。
「そして我々は――国民が楽しみにする祝祭の気運に、水を差してはならない」
「だからこそ、妹の捜索を頼んだんだな」
クリスケッタがどこか申し訳なさそうに頷く。「ああ、その通りだ」
「うーん、気持ちは分かるけどー……世界が滅びるかもしれない〝おおごと〟なら、お姫様がいなくなっちゃったことも話して、みんなで探したほうがいいんじゃないのー?」リルハムが無邪気に尋ねた。
「もっともな意見だ。ただの御付きの犬の獣人だと思っていたら、多少は頭も利くようだな」
「うあー! なにを失礼なー!」
その皮肉は、さすがのリルハムにも刺さったのだろうか。
むきー、と両手をあげて彼女は怒気を吐いた。
「リルは犬じゃなくて、〝狼〟の獣人だよー!」
「「そっち!?」」周囲のエルフ兵が思わず突っ込んだ。
犬じゃないもんー! 頭が良いって褒めてくれたのはうれしいけどさー、と小馬鹿にされたことには気づかないまま、リルハムは頬を膨らませる。
その様子を見て、クリスケッタは『先ほどの言葉を訂正しよう……やはり頭は利かないか』と気まずそうに頬を引きつらせた。
やがて彼女は溜息を振り払うように頭を揺らしてから、答える。
「妹の失踪を
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新章・エルフと世界樹編 本格始動中!
面白そうでしたら♡、星★での評価などもぜひ。
(年度の終わりで移ろいゆく中、励みにさせていただきます……!)
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