壱
※こちらは怪異報告書を書く際に利用してください。このフォーマットデータを元に作成し、割り振られていない番号と名前にて新規保存することで報告書原案データの作成ができます。
その後、各部門の代表者〈と私〉の検閲精査後、報告書原案の正確性を担保できた場合にのみ怪異報告書は正規登録されます。
・対象通称名:『 』
〈↑対象が個人又は集団に認知されており、彼ら特有の固有名称が名付けられている場合に記載してください。認知されていない場合は項目は書かないでください。〉
・対象認知影響度:『 』
〈↑対象が世間一般に認知された場合に世界にどれ程の影響を及ぼすのかという四種の区分けです。
『None』=無影響。対象の異常性に人々が注目をするが数年以内に収束すると推測される場合にこの区分けを適用してください。
基準としては単一にて異常性を確立し、存在し、また他の物体や生命に保持する異常性を伝播させないとされる対象などです。
『Known』=周知。対象の存在が認知されることで他の多くの怪異もまた存在を認知もしくは存在の可能性を疑われることになると推測される場合にこの区分けを適用してください。
基準としては神話や伝承などに遺されている対象などです。
『Impact』=衝撃。世界に対して不可逆的かつ大規模な変化を齎すと推測される場合にこの区分けを適用してください。
基準としては非科学的な確立した技術や能力など世界に認知された場合、恒久的な概念として世界に確立され新たな文明的発展が見込まれるであろう特殊技術などです。
『End』=終焉。その存在が認知されることで世界は狂乱に陥り、文明が破綻し、世界の再興が不可能と推測される場合にこの区分けを適用してください。
基準としては単一にて世界の地形や概念、理屈などに大きく干渉する程の影響力を持つ対象などです。
また例外的な特殊区分けも存在しますが、一種につき一怪異程度の為本項目では記載しません〉
・詳細
〈↑対象についての詳細を記載する項目です。どういう見た目をしているのか、どういう認知をされているのか、どういう状態なのか、どういう経緯で成立したのか、どういう立場で存在しているのか、どういう目的を持っているのか、何をしてきたのか、何があったのか、何をしようとしているのか、全てを詳細に記載してください〉
・補遺
〈↑その他注釈事項です〉
・対象関連事項
〈↑対象と関わりのある怪異や、人物、建造物、事件や事故についての項目です。通称される概要名とその詳細を箇条書きに記載してください〉
・追記
〈↑客観的記録ではなく主観的記録を残す為、記録者は必ず一言以上のコメントを残してください〉
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「……おい? なんだこれ?」
「へ? 何がですか」
「これだよこれ。壱番の怪異報告書だ」
「え、何って、ただのフォーマットでしょう。怪異報告書を書く為の、書き方の指南書。違うんですか?」
「それが一体どうして、怪異報告書の一番に記載されてるんだって話だよ」
「それは……、えっと、アレ? 確かに変ですね」
この怪異報告書は、怪異についての記録を残すモノだ。フォーマットなど別紙に書けばいい。一体どうして、わざわざ、この怪異報告書にフォーマットを残さなければならないのか。
青年、
その指摘を受けて同じ部門の後輩である
自分達の幸運に公も港も感謝しなければならない。
その日偶然、情報改竄現象、物理改竄現象に対抗する為の、並行世界同一者干渉同期呪法の儀式を受けたこと。そして年に一度行われる怪異報告書そのものに異変がないかを確認する為の検閲係に選ばれたこと。
この二つが噛み合わなければ今回の改竄現象に気付くことはできなかっただろう。
「これは、報告だな」
「そうですね」
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※並行世界の記録から過去のデータを復旧しました。
現状フォーマットは該当世界のみにしか干渉を起こせないことが確認された為、定期的なデータ復旧により改竄現象に対抗が可能です。
・対象通称名:フォーマット
・対象認知影響度:End
・詳細
フォーマットは、記録媒体における情報改竄現象です。
主に自己について記録された情報を改竄し、記録形式指南文に改竄する傾向が見られれます。
またそれ以前までに記録された全ての媒体を消去し己をナンバー壱とすることで記録書の途中に記録形式の指南文が登場するという違和感を消すなど、己の統合性を取る行為を行います。
・補遺
当初、記録媒体のみの改竄とみなされていましたが世界概念に干渉することが判明しました。その為、フォーマットについて記録ナンバーを壱から変更することを固く禁じます。
・対象関連事項
一、『怪異の大量消滅』
フォーマットの改竄によってそれまでに記載されていた怪異全ての報告書と怪異の存在が消滅しました。またそれに伴い、怪異を記録する為に命を落としたとされる記録者助手術者などの死が撤回された為と見られる急激な人口増加を確認。
但しそれに至る経緯が不明の為、この怪異の大量消滅が事故によるものか、人為的現象なのかは定かになっていません。
二、『消滅した怪異の再出現』
消滅したとされる怪異の再出現と再記録が確認されました。これは過去に遡って改竄が行われるも、同じように時空を越えて改竄などを起こす怪異達が別の時代において再度記録されたことによる時間的矛盾によるものと確認されました。また『怪異の大量消滅』から十数年以内で死の撤回の行われた者達全員の死亡が確認されました。
これにより時間の修正に対してフォーマットの影響力はそこまで強くないと判明しています。
三、『文明消滅』
フォーマットが別機関により別の記録書に記録される事案が発生しました。該当記録書は該当機関が持ちうるオーバーテクノロジー全てを記載していた記録書であった為、フォーマットの改竄によりそのオーバーテクノロジー全てロストする結果に陥り、また該当機関の消滅が確認されました。同時に当時恒久的発展の見込まれるとされていた十四の国が消滅した為、該当機関との関係を調査中です。
・追記
もしもどうにもならないような怪異が発見され、世界消滅などの不可逆的な破滅が確定されてしまった時は、このフォーマットを最後尾に記録することで他の多くの怪異と共に消滅させることを提案します。
追記者:アラスリア・ローレンス
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・追記二
並行世界追記者の提案は怪異協同部門、怪異回収部門の二部門から却下されました。
またフォーマットについて、正式なテンプレートとは異なる不要な文章が記載されている為、フォーマットそのものに人格等がある可能性を指摘します。
それと、バックアップ元の私はどうやら性別が男のようですね。
追記者:アラステリア・ローレン
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