怪異蒐集記録
不皿雨鮮
零
これは皮肉である。『怪異』と我々が呼称する超常存在に対して、恐怖を越えて好奇心を満たそうとする者など同族くらいしかありえないだろう。
そんな皮肉を込めて、まず我々は我々のことを報告しなければならない。
我々が未知と共に道を違え、何か大きな変更の決断をしなければならない時、我々の目的とは何なのかを振り返る為に。
故にこの報告書は二度と変更の出来ないように、電子的、物理的、そして呪術的にロックを掛けている。以降の閲覧の際には、呪術的解毒呪法の行使をしながらの閲覧を強く推奨する。
『怪異』と我々が呼称する超常存在に該当するか否かの基準は以下の通り。一般的な既知の姿形でない、一般的な物理法則に則らない現象が意識的無意識的を問わずに起きる物体、或いは生命体であること。
ただそれだけ。
更に要約して言えば、異常な存在であると認識できるモノはなんでもかんでも『怪異』である、ということだ。
我々はそんな『怪異』達についての情報を、そして彼らそのものを蒐集し、管理する。決して一般の者達の手に、目に触れない所に。
その為であれば我々は『怪異』を殺すことさえ黙認する。『怪異』達がどうなろうとも、我々は蒐集でいればいい。
『怪異』の中には我々と敵対する者もいるだろう。だが、だからこそ我々は戦わなければならない。
誰の為でもなく、我々の為に。
我々が行動するのは、ただそれだけの為である。
だが、忘れなきように。
我々は『怪異』という未知の存在を知っている。認識している。居ると信じている。
そんな存在は一般的に考えて異常である。
そう、我々は異常者だ。
故に私達もまた『怪異』だ。
異常な存在として、一般社会に紛れ込まなければならない。
我々は最後に蒐集されなければならない。
故に、我々は一ではなく零を冠する。我々にて終わりとなる為に。
記録者:土御門遥
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