第30話 伝わるということ

「俺の返事は ── もう決めてるからだ」


「ウソ・・・ちょっ、待って深呼吸させて。ごめん、やっぱ明日の朝まで待ってよ。せめて今夜だけでも夢みさせて(泣)」


「ダメ、、ダメだ。今言わせてくれ。俺の心臓が持たない」


「うーー・・・わかった……」



俺は枕の横に正座してぎゅっっと目を閉じた。

告白からの秒でフラれるのはさすがにキッツイなぁ。

フラれたあとで一緒に寝るなんて心臓は持ち合わせちゃないぜ・・・ツラ・・・


真っ暗な俺の部屋、シーツの布が擦れる音と柚木が身体を起こす音が同時にした。

俺しゃんとしろ。


瞼がぼんやり明るくなる。

柚木がスマホの電源を入れたのかな(?)



「城崎 ─── 。目を開けてくれ」


次の瞬間、俺の頭の上に柔らかいものが触れる。

ベッドの上で正座した柚木が屈んで俺の頭のてっぺんにキス・・・した?


「城崎、お前の髪いい匂いだな」


そういいながらもう一度髪にキスしてくれる。

俺は思わず左手でほっぺたを抓りながら右手で頭のテッペンを触って確かめた。

顔が熱い。

火がついたように赤い・・・・・・だろうな。


「お前と一緒にいると俺は本当の俺でいられるみたいだ。今まで俺自身も気づいていなかった俺に出会えた。教えてくれてありがとう。

俺もお前が好きだ」


「マ、マジで?俺、ほんとに好きでいていい?」


「いいさ、お前が逃げたら俺が追いかけてやる」


「ぅ・・・・・・ぅれしい、俺本当にダメかと・・・」


すると柚木は腕を組んで片眉を上げた。

ニヤリと笑いながら、


「モテ男のタラシのくせして」


くせしてって!そりゃぁないよぉ〰〰


その場にぱっと立ち上がると、目の前で優しく笑う柚木の顔を抱きしめた。

ふっとスマホの灯りが消える。

いっつもいいところで消えるなコイツ!



そのまま二人一緒に並んで、柚木の顔の近くで眠った。

時々、柚木の顔を触って安心する。

近くにいる、なんていう安心感だろう?

このまま世界が終わっても微塵の後悔もしないだろーな。俺。



俺の指を引き寄せて、指を抱き締めるようにして城崎が眠る。

生まれて初めて誰かに好きの気持ちを伝えられた。

気持ちが通じ合うってくすぐったい。

何て幸せなんだろう。



柚木の息使いに包まれて幸せを感じていた。


城崎の寝顔を見ながら安らぎを感じていた。



手のひら王子とハニカミ皇子

第一章 END

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ここまで高覧いただき、ありがとうございます。香鳥と申します。


「 手のひら王子とハニカミ皇子 」

は、ここまでを第一章とし、続きはしばらくお時間をおいてから書かせていただきます。


毎夜お話をお届けできるよう頑張ります。


もし、こんなお話し、あんなお話しを、この器用な王子と不器用な皇子で見てみたいという方がいらっしゃったらお声を聞かせてくださいませ。


お待ちしています。


2022年2月12日 香鳥‪🦜‬





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手のひら王子とハニカミ皇子 香鳥 @katomin

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