第27話 近づく
抱きついた柚木の頬から俺の唇に何か伝わってきたような気がした。
一生離れることのないような、繋がって切れることのないような何かが確かに伝わってきて。
嬉しくて嬉しくて、ぎゅぅっと目を瞑った。
目を閉じた俺の瞼の裏が、七色に変わった。
こいつの側にいたい。
一生こいつから離れたくない。
この瞬間にそう感じたのを、俺は生涯忘れないって思った。
「11時か・・・」
俺が離れると照れ隠しのようにスマホに目を落とした柚木が呟く。
「明日も時間ある(日曜日)し、そろそろ(勉強)終わるか?」
「そうだな。城崎、洗面所借りるよ」
「俺も歯、磨く!」
今の俺、ほぼ歯ブラシのサイズだから!
歯ブラシは口にはいんないから!
指先につけた歯磨き粉で指磨きしてスッキリした。
好きな人の隣で歯磨きをするってさ、何だかすごく“ 許されてる ”って感じ。
柚木の歯ブラシがウチの洗面台においてある、それだけで距離がすっごい近づいたのを感じる。
そう、歯ブラシには “ 一緒に暮らしてる感 ” があるんだよ。
俺はそんな些細なことをひとつ、ひとつ拾い集めては、1人でときめいてた。
ウチと同じ味の歯磨き粉だ、って城崎んちの歯磨き粉を借りながら俺はさっきの女子達と城崎の会話を思い出していた。
“ ・・・大切な人なんだよ。俺の一番大事な人が今ココにいんの。 ”
“ 俺の一番大事な人を傷つけること俺は絶対にしないし、誰であっても許さない。 ”
大切な人・・・家族以外から言われたこと、ない。
洗面台でクチュクチュうがいをしている城崎。
歯を磨きなら、ふと視線がぶつかって、、恥ずかしそうに目をそらす城崎。
俺のことを大切な人って言ってくれたんだよな。
だよな?
俺、聞き間違えてないよな ────。
だんだん自信がなくなってきた。。
柚木を意識しすぎたのか、無口になった俺だったけれど。
深夜0時すぎ、あいつと小さいまんまの俺は俺のベッドの上で一悶着している。
「城崎がベッドを使えよ。俺は下で寝るから」
「床なんてやめてよ、寝れないよ。柚木がベッドで寝なよ」
「お前のベッドだろうが」
「こないだは柚木が譲ってくれたじゃん」
「お前を、、寝てる時に・・・・・・」
「あっ!大丈夫!俺、枕元で寝るからさ」
ようやく柚木が折れ、約束通りに柚木の鼻先あたりで俺は丸くなった。
ため息を
窓から街灯も入らない真っ暗な部屋。
低くクーラーのモーター音だけが聞こえてくる。
暗闇に目が慣れてきた俺は、シーツの上をもそもそと柚木の方へにじり寄る。
柚木も気づいたのかな、黒い瞳が俺を見つけると・・・。
目の前の俺を認めると、優しく目を
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