第24話 王子、告白する

「「「 い く よ ~ せ ぇ の、

 あーーらーーたーー♡♡♡♡

 あ・け・てぇーーー!! 」」」


「うるさいよ。聞こえてるよ。ナナ、アカリ、マオだろうが」


 俺は精いっぱい大きい声でドアの外に向かった。


「いたぁ~~!あらたぁ♡暑いから開けてよぉ、アイス買ってきたよ~」


「だめだ、帰ってくれ」


「「「 え え えっっっ ! !?

 どうしてよーー!!

 イヤァーーーー!! 」」」


「(耳キィーン)声大きいよ、近所迷惑になるから。人が来てるんだよ、悪いけど三人とも帰って」


「やだやだ!今夜は一緒に勉強するって決めてるのにぃー」


「新ぁーーせっかく来たのに追い返すなんてひどーいよー!」


「ちょっと誰よ!新を独り占めするなんて許さないー!出てきなさいよっ」



 俺は思わず息と唾をグッと飲み込んだ。


 城崎は何ていう気なんだろう

 どう、この場を収めるつもりなんだろう―――。


 玄関先で仁王立ちしているちっこい城崎の小さい背をハラハラしながら見つめる。



「ナナ、アカリ、マオ聞いてるか?

 ・・・大切な人なんだよ。俺の一番大事な人が今ココにいんの。だから頼む、わかってくれ」


 思いがけない穏やかな声。

背中を向けているから見えない、が、ドアに向かって微笑んでいる。

そんな顔が想像できる。


 表にいる女の子たちは突然の言葉告白に水を打ったように静かになった。


「お前らはずっと友達だよ。でも俺の一番大事な人を傷つけること俺は絶対にしないし、誰であっても許さない。お前らもそう思ってくれるって信じてる」


 もう、もう何も聞こえない。

 小さい背中が大きく頼もしく見える

 城崎の言葉だけが頭の中を行ったり来たりしている。


 今ココにいるのは大事な人。

 この部屋にいるのはあいつと俺だけ。

 大事な人って城崎、それって ─────。



 しばらく小声でドアの内と外と会話していた城崎だったが。

 やがて表から明るい声が聞こえてきた。


「わかったよ。新とずっと友達でいたいもん、私ら帰るね」


「私たち勉強頑張るよ、いい点とれたら見せるね、新」


「あのぉ・・・新の大切なひと・・・・・・。さっきは嫌なこと言ってゴメンね。新は何も悪くないからね、怒らないであげて」



 玄関にいた城崎は俺を振り返って微笑むとウインクした。


 そして、


「「「 あ ー ら ー た ーーー

 ア イ ス こ こ に お い と く ね ~ 」」」


 の女の子たちの大合唱を背に、晴れやかな笑顔で俺のところへ戻ってきた。

 戻ってきてくれた。



 手のひらにのる小ささなんて、これっぽっちも気にもならない。

 度量の大きな大きな男だ。

 なんて奴、思い切り抱き締めたくなる。


 こいつみたいのをいい意味での人タラシっていうんだ。

 その人間力で誰でも自分のフィールドに引き込んでしまう。

 引き込まれた方も当然のように、自然にこいつを受け入れる。


 そんな奴にたらし込まれたら俺なんてひとたまりもない。


 ひとたまりも・・・、でももう、もう何でもいい。

 またこいつと時間を過ごせるなら。


 もう何だっていいんだ。

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