第23話 落ちこみ皇子

聞き覚えのある女の子の声だ。

同じクラスの、いつも城崎を取り囲んでいる明るくて華やかな子たち。

栗色の髪、大きな瞳をキラキラさせて見るからに柔らかそうで可愛い・・・。


どうして城崎の家を知ってるんだ。

それも一人や二人じゃない。

こんな夜に、、まさか前にも来たことがあるってことなのか?


ということは・・・いわゆるそういうことか。


そう ─── だよな。

俺も少し考えれば思いつく事だった、よな。

このタラシのモテ男が一人暮らししてて女の子たちが放っておくわけない。

こいつだって見るからに女好きだし。

この部屋も連れ込み放題ってことか ──── 。


晩メシ作りを手伝ったキッチンも、窓際のベッドも、座ってるこのソファーも。

城崎が女の子と過ごしたことがあるのかと思った瞬間。


居心地のよかった部屋が急によそよそしく、俺に背を向けたような気がした。

天井の照明が薄暗く小さくなったみたいに心細い。

俺の目線も、気持ちも、床にポトンって落ちてゆくのがわかった。

俺はどうしたいんだろう?

シャーペンを持つ手をキツく握った。



柚木の目からみるみる光がなくなり手がぎゅっと握られたのを目の前でみた俺は焦った。

こいつ絶対におかしなことを、、誤解してるだろ。


女子らに表から部屋の灯りがついてのを見られたのなら、部屋にいることは隠しようがない。

なら今の俺がすべきことはたったひとつだ。




でもあいつらだって易々と引っ込まないだろう。

これまでも散々粘られたことがあるし、第一、夜に来るなんてダメだろうが。


でも長引かせない、柚木の辛そうな顔はみたくない。


でも今の俺こんなん(てのひらサイズ)だし、、どうしたら、どうしたらいいんだ。

考えろ俺!全集中しろ!


彼女たちに納得してもらいたいなら・・・

誤魔化さないで俺の本心を伝えること、それっきゃない。


俺は、すぅーー はぁっ と深呼吸をした。

腹はくくった。

俺らしくだ、即行動する。


俺は意を決してテーブルの上からソファーに座っている柚木の膝に飛び移った。



柚木はびっくりして俺が太腿から滑り落ちないように腕でガードしてくれている。

崖を降りるように柚木のジーンズを掴んで伝って床に降りると、


「柚木っ、廊下のドア開けてっ。あと絶対に声を出さないで!」と小さく叫んだ。


ハッとした柚木は頷くと廊下のドアを開ける。

俺は部屋から駆け出す。


廊下を走りながら、俺の家こんなに広かったっけ?と玄関へ向かって走る。

柚木も心配そうに足音を忍ばせてついてくる。



城崎、一体どうするんだ ──── ?

無理をするなよ。。


でも、でも、、俺は信じる、城崎を。

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