第22話 ラブラブからの・・・

晩メシの後、俺は柚木の黒いTシャツの胸ポケットに入った。


風呂の使い方や洗濯機の使い方を教えてまわる。

あの日みたいにゆらゆら揺れてる柚木の胸ポケット。

やっぱりあったかいや ── 。

匂いも最高♡


風呂に湯をためている間、俺たちはパソコンの前に座り込んで検索を始めた。

人間の身体が小さくなる摩訶不思議な超常現象の記事を調べる。


でもまぁ、わかっていたことだが、SFかお伽噺以外でそれらしい情報なんて何も見つからなかった。


がっかりしている俺に柚木は眉を下げて、


「大丈夫。昨日だって元の姿になったんだから、またきっと戻れるさ。元気出せ」


パソコンの前であぐらをかいて丸めた俺の背中を撫でてくれる。

半べそで柚木の顔を見上げると俺を見てニコッと微笑む顔。

ちょっとだけ元気が出た。



ま、悪いことばかりでもない。

身体が縮んだおかげで今夜は一緒に風呂だよ。

変わり映えのしないアパートのユニットバスだけど柚木がいると特別に感じるよな。

あいつはこんな小さい風呂が珍しいらしくキョロキョロみまわっている。


風呂の蓋を半分閉めたままにして洗面器をのせてもらった。

湯を注いでもらった洗面器に俺も浸かる。


「風呂にテレビがついてるんだな」


「だな。でもアパート全体のWiFiがあるから風呂でYouTube見てる方が多いかな」


「すごいな。俺ん家はテレビもついてないし、風呂場でスマホやタブレットなんて考えたこともなかった」


「結構いいぜ。風呂の中でストレッチとかマッサージとか」


「俺もやってみたいな」


柚木はYouTubeを見ながら、額から首筋、鎖骨へとゆっくり指で撫で下ろして肩こりストレッチをしてゆく。

長い指が湯に濡れた肌の上を滑るのを俺はボ〜っと見ていた。

肌が薄いピンク色だよ、、、、マジかぁ。

俺の妄想鼻血が走り出しそうになる、あっぶねぇ ──── 。



風呂上がり、スポーツドリンクを飲む柚木が、「飲むか?」と俺にニコッと笑いかけた。

即、「飲む!」と言えばペットボトルを傾けてくれたところに口をつけて慌ててごくごく飲んだ。

わぁ・・・間接キスだぁ・・・なんて

これっぽっちも俺らしくなく、けなげに恥ずかしくなる。

本当に好きな人と。

なんて事ない日常はこんなにも暖かくて優しいんだ。



ただ ───── 。

こんな平和をかき乱すことはいつだって突然やってくるんだよ。



《 ピ ン ポ ー ン ♪ 》


ドアチャイム?客?

もう9時、こんな時間に客なんて・・・・・。


再びテスト勉強を始めてた俺たちの耳に突き刺さるようなチャイムの音。


参考書から顔を上げ、柚木は玄関の方を振り返る。

俺もテーブルの上に立ち上がって玄関のドアを睨む。


《 ピンポーン♪ピンポンピンポン♪ 》


ピンポンを連打すんな!

そして、やがて聞こえてきた信じられない声。


“ あらたぁーーー遊びにきたよぉ☆ ”


“ 新~~♡勉強一緒にしよぉ〜~ ”


“ 部屋にいるんでしょぉ?開けて! ”



はぁ?どうしてこのタイミング?

なんで!?


ありえねぇよ、、もう・・・最悪。

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