第16話 連泊

窓を開けた柚木の部屋。

恥じらうような柚木にたまんなくウズウズしがら勉強って天国。

俺のアパートと違って庭からは風が入ってきて気持ちがいい。


家の奥からはご飯を炊く、いい匂いがしてきた。

家族で過ごす夕食の懐かしさに参考書を捲る手が止まる。


「城崎、腹、へったのか?」


柚木がシャーペンをくるくる中指と人差し指の間で回しながら上目遣いで笑う。


「(ドキン)へった〜。誰かに作ってもらった夕飯なんて本当に久しぶりだよ」


「いつもはメシ、どうしてるんだ?」


「基本、自炊なんだけどさ。おかずとかはスーパーで買うのが多いなぁ」


「意外とマメなんだな」


夕食の香りに混じって、雨の匂いがしてきた。

雷が遠くに聞こえる。

夕立が来そうだ ───── 。



柚木家での夕食は仕事で遅いお兄さん以外の6人で囲んだ。


お父さんは高校のPTAの偉い人で、学校のことをよく知っていて驚いた。

俺、変な評判とか立ってないかちょっとドキドキだ。

妹の雪子ちゃんは幼稚園の年中で、恥ずかしそうに柚木の後ろに隠れていたが食後のトランプですっかり仲良くなった。

俺の膝の上に座ってうとうとしている。


お母さんと都さんの料理は本当に美味かった。

夕食のもてなしを受けている間に、予想通り夕立になった。

バケツをひっくり返すような雨と雷鳴が鳴り止まず、お父さんの、


「明日(土曜日)は学校も休みだし、雷も酷いから今夜は泊って行きなさい」


の言葉に甘えて俺は2日連続で柚木の部屋に泊まることになった。


まぁ風呂は別だけれど、今日は洗面器風呂じゃないけれど。

柚木の部屋に布団を敷いてもらって寝転んだ。


昨夜と同じ部屋、景色、天井。

なのに俺は、無性に昨日の夜が懐かしくて堪らない。


こいつのベッドで一緒に本を読みながら寝落ちして。

背中を撫でてもらってタオルをかけてもらったのをぼんやり覚えてる。

あの夜に戻れたらいいのに・・・・・・。



城崎が俺の部屋で眠っている。

昨夜も眠っていたが、、今日はサイズが違うけれどな。


昨日の夜、俺の横で丸くなって眠ってしまった小さい城崎の髪や背中を撫でていた。可愛かった。


うっ・・・・・可愛いってなんだ!!?

180cmもあるデカい男が可愛いわけない!断じてない!


断じて ───── 。



大きさは違っても、昨日と同じ格好で丸くなって眠る城崎。

いっそ小さいままだったら俺だけのものだったのに、な。

そんなことをうつらうつら考えていたけど。


俺はベッドから降りて城崎の顔をのぞきこんだ。

そして、、瞬く間に城崎の隣で眠ってしまった。

あまりに心地がよくて・・・。



夜中に城崎の手が俺の背を撫で、俺の左手を抱き込むようにして眠っていたことも知らないまま。

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