第17話 ウチにおいでよ

翌日は土曜日。

学校は休みで週明けからは期末考査だ。


朝メシをご馳走になり、昨夜は会えなかった柚木のお兄さんにあいさつして。

あり?・・・俺、お兄さんに睨まれてるの?

柚木に似た切れ長の目元に細い銀縁メガネ、10歳年上で大手の銀行に勤めているんだって。

何気に無言で眉間に皺を寄せて ガン睨みされて、緊張のあまり見つめ返ししちゃった。。

コワイ・・・。



兄貴ってば・・・何、城崎と見つめあってんだよ。

朝飯ん時から上から下まで舐めまわすように城崎を見てたけど、まさかタイプとか言うなよ、絶対言うなよ・・・!!

──── ハッ!俺は何考えてんだ!?



謎に荷物の多い俺だがみんな気づかないでいてくれた。

お母さんと都さんは玄関の外まで出てきて、「週末も居てくれたらいいのに」と引き留めてくれたけど、俺は丁寧に断ってアパートに戻ることにした。


都さんは何種類もの料理をタッパに詰めて、お母さんはいつでも遊びにいらっしゃいと何度も言ってくれた。


柚木は ───、あいつは玄関のところでぼんやり立っている。

少し頼りなげな顔のあいつを見ていたら俺はつい、


「なぁ柚木!今日は俺んちで勉強しないか?月曜から期末考査だしさ」


と口走っていた。

柚木は目をまんまるにして俺を見てからハッとして、


「そうだな・・・・・・母さん?」


「城崎さんは理数系がお得意のようだから、伊織しっかり勉強してきなさい」


これって(多分)お泊まりもOK!

親の許しをもらったってことだよな!


次の瞬間俺は心の中でよっしゃ〰!とガッツポーズ。

俺の部屋に柚木が来る!

来る!!

掃除だ!!!


そこからの俺は挨拶もそこそこに駆け出していた。

俺の背中で蝉の合唱が始まっていた。



城崎の家にいく、行ける。

まさか誘ってくれるなんて思わなかったから正直、かなり凄く嬉しい。


「俺は反対だぞ。伊織、あんな不良と勉強する必要があるのか?」


兄さんは不服そうだ。

途端に母さんと都さんがタッグを組んで兄さんに意見をはじめた。

あ、あの兄さんが二人に完全に押されてる。


「にいに!新クンは優しいよ」


雪子まで応援に加わって城崎を擁護しはじめた。

ハタチ以上年の離れてる妹にからっきし弱い兄さんは困った顔で雪子の頭を撫でて許してもらってる。


「城崎くんは全教科で学年で10位から落ちたことがないらしいぞ」


と父さんまで口を出す。

父さんは学校の保護者会会長だったっけ、忘れてた。


分の悪くなった兄さんはムッツリと黙りこんだ。

拗ねてんのかな、兄さん。


城崎が我が家にも新しい風を吹き込んでくれたみたいだ。

爽やかな春の風のような。

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