第4話 立てよ研究員
「では親愛なる研究者諸君、御存じなら大変申し訳ないが、確認のため、今この
レーヴ博士は研究員を呼び集め指揮を執っていた。
こんな事になったのは博士のせいだ。それは二日前の事――
「さてと、そろそろ『新兵器』の開発しないとね」
「――は?」
新兵器って王から言われてた、あの?
それならラヴィーという実物があるんだ。後は量産でも何でもするんだろうと思っていたのに何をトチ狂ったのか。
「その
「だからってラヴィーは戦闘訓練こそまだですが、魔法の補助なしで結構な
「だから、だよ。採用されちゃ困るから隠しているんだ。私の予想が外れていたら発表する。そういう筋書きなんだ」
何を言っているんだ?兵器を造っても渡すかは
「二日後、本棟にみんなを集めてね。研究員
「…はいはい。博士の意思のままに……」
博士は俺の疑問を解消することなく会話を終わらせた。
まあどうせ、博士は何か大きな流れを見ているのだろう。きっとそれは博士にしか分からないのだろうし、個人的にも不確定要素に対して幾つも手を用意すべきだと思う。
ただ、その流れとやらは、博士がこんなに焦るほどの物なのだろうか?人類の英知、その最高到達点たる、博士が。
――そして時間は今に戻って、話の続きである。
「過去に一度現れ、文明を滅ぼし、そして今また現れた魔王!その軍勢から民を守るため、我々は兵器の開発に取り掛からねばならない‼」
「兵器開発だって…⁉博士が許可したのか⁉」
「でも所長になった時にしたくないって条件付けてたじゃない!」
研究所にざわめきが満ちる。そりゃそうだ。博士は兵器を造らないと公言していたのに、それをすんなり曲げたのだ。3か月前の自分もそうだったしな。
「君たちの混乱はもっともだ!だが民たちも…いや!人類すべてが混乱している!魔王という脅威に!ならば我々がすべきことは何だ⁉研究者がすべきことは何だ⁉」
「人類は結束しなければならない。800年前と比べ、我々の文明は未熟と言っていい。だが!人類には一度魔王を
「
「「「 オ ォ オ オ オ オ オ オ オ オ ‼ 」」」
まさに大号令。それぞれが狂戦士のような面持ちで仕事に取り掛かっている。ここにいる全員、武闘家じゃなく学者なんだけどな。
「……どうしてヘルム君はそんなやけっぱちな顔してるんだ?」
「そりゃ、このどんちゃん騒ぎに参加できないからですかね。考案くらい、ラヴィーの世話の片手間でできますが?」
「そんな事して、お父さんもう知らない!って言われても知らないよ?」
「実際に似たような事言われたことがある人が言うと説得力が違いますね」
第一、父親は可愛い娘を戦場に立たせようとはしないんだから。
博士が言った通り、俺は研究者で、戦う力なんてこれっぽっちも無くて、それでも自分が出来る最善を尽くそうとしたら、誰かの後ろでこうやって…戦うための
せめてもの反抗は憎まれ口をたたくだけ。それでもいいさ。
これから先は分からないが、今だけは幸せだしな。
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