第1話

 目が覚めると、目の前には嬉しそうに微笑む美男美女がいた。


 どうやら私はこの世界の入り口にある『転生の門』を通る際に意識を手放していたらしい。


 自分の手に目をやり、周囲を見渡す。


 小さくてぷくぷくとした手。木材で統一されたセンスの良い家具。広いお部屋に手の凝った細工が施された照明。


 部屋と、周囲の人の顔を確認して安堵した。

 


 (よかった、あの少女の家で間違いないわ。ただ...)



 自分が一番救いたかった少女に転生することが出来たのは良いのだが、どうやら望んでいた『魂融合転生』ではなく、『落ちこぼれ転生』をしてしまったらしい。



 まぁ、大した問題ではないから良いのだけれど...待つ時間が長くなるわね



 私が魂融合転生を望んだのは、生前...ではなく、女神のサンサーラとしての記憶を持ったままこの世界に生まれるより、途中からのほうが動きやすいから。

 幼少期はどうしても周囲の加護の目が多く、自由に動くことが出来ないのだ。



 普通に他の子の魂を転生させるなら『落ちこぼれ転生』でも全然いいのだけれど。この世界のことを記憶を持ったまま学ぶことで新しいことに気がつく子もいたりするから



 だが、女神サンサーラは神々の中でも古く、知識が豊富。


 第一、面白半分で世界を幾つも創造したのは兄さまだから、世界の仕組みも熟知しているわ。あ、でも...流石に子供人間達の友好関係は知らないから『落ちこぼれ転生』も良かったのかも...?


 人間の一生など神々にとっては漫画を一冊読むだけで過ぎ去ってしまう。いくら偉大なる転生の女神・サンサーラとて目まぐるしく変わる無数の世界の情勢を完全には把握できていない。


 それにしても、いくら私が退屈していて、かつ良い魂が見つかっていなかったとはいえ、一女神を泉に落とし転生させるのはどうかと思う。


 転生の仕組みを作ったのは私自身。その仕組みは誰にでも作用する。勿論女神の私とて以外ではない。


 ただし、神であり、その仕組みを作った本人と言うこともあり、女神のとしての力は使おうと思えばこの人間の体であっても使える......負担はかかるけれど。

 


「見てください、ああ、なんて可愛らしいこと。天使のようだわ...」



 先程から赤ん坊に転生した私を見つめていた美女が美男に話しかける。



「あぁ、私達の天使。名前はアージェラ...誰よりも誇り高く、そして気高く育っておくれ」



 アージェラ...絶対に、救って見せる。今まで何人も転生者を送って来たんですもの。私だって彼らのように救ってみせるわ。この子は絶対に、死なせない...!


 


 

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