突然始まる女神様の悪役ライフ!〜私が何人の転生者を送ってきたとお思いで?〜
@clorofie
プロローグ
『はぁ...』
場所は天界。
あらゆる世界へと繋がった泉を覗き込みながら、彼女は憂いげにため息をつく。
星空を閉じ込めたような瞳に、ほんのりと色づいた唇。その肌は雪のように白く、肩ほどの銀の髪はふんわりとその頬を撫でている。
その絶世の美女こそ、転生の女神・サンサーラである。
これまで数多くの報われぬ人々を異世界に転生させてきた、偉大な神。
ある時はトラックに跳ねられた少年を、またある時は彼氏に騙されて突き落とされた女性を、そしてまたある時は病弱で無念にもその世を去った幼気な少女を。
他にも過労で倒れた会社員、親に虐げられ自殺した少年、仲間のために命を落とした裏社会のボス等々...
彼らを転生させては、その活躍を見て楽しんできた。
だが、そんな彼女は今、重大な問題に直面している。
『退屈だわ...』
そう。転生者を送り続けて幾百年。彼らが織りなすストーリーに面白さを感じなくなっていたのだ。
『誰か、面白い子でもいないかしら...救うべき悪役がまだ沢山いるというのに、困ったわぁ』
『なら、貴女が行けばいいでしょう?』
『!!』
そう、独りで泉に向かって呟いていると、不意に背後から声がした。
驚いて振り向くと、そこには弟の戦神・シュラートがビスケットを片手ににこやかに佇んでいた。
『...どういうことかしら?』
『こういうことです』
背中に衝撃を感じるとともに視界が反転した。数秒たって、自分が泉に突き落とされたのだと分かった。
『シュラート!?何をするの!』
落下しながら叫んだ。
泉は幾つもの世界と繋がっている。転生者を送る際には特定の世界を泉と完全にリンクさせてからそこに飛び込んでもらっている、ないしは放り込んでいる。
だが、彼女は特定の世界を泉と繋げていない状態で泉に落とされた。つまりは、どの世界に落ちるかはわからないのだ。
(大変大変!ランダムは流石にまずいわ!今はあの子のところに!いかないと!救わないと!!)
彼女は無理やり力を行使し、とある世界を自身に近づけた。
転生にも複数パターンがあり、状況によって彼女はそれらを操作してきた。
一つは、『落ちこぼれ転生』。落ちこぼれすぎて見ていられないほど悲惨な生涯を送る者に、転生者を送り込み生まれる段階から始めるものだ。落ちこぼれていなくても行う方法ではあるが、落ちこぼれに対して行うことが多いのでそう名付けている。
これは転生者のみの魂が宿っており、元の魂はより適切な別世界へ恩寵とともに送るスワップ方式。
二つ目は『悪役転生』。これもスワップ方式だが、『落ちこぼれ転生』と違うのは、転生者の記憶が目覚めるタイミング。落ちこぼれ転生は生まれたときから生前の記憶を持ったままで活動するが、悪役転生は途中で突然思い出す。
断罪のときかもしれないし、なんでもない日の朝かもしれない。
勿論、悪役にのみ使う転生法ではないが、悪役が比較的多いので『落ちこぼれ転生』同様そう名付けられている。
三つ目は『魂融合転生』。これは元の魂と転生者の魂を融合させるもの。ある程度育った段階で行う事が多い。
四つ目は、殆ど行われないが、『直転生』という。これは、転生者をそのまま送り込む転生法だ。なので、生前の外見、年齢のまま転生先の世界へ現れる。生物の理を無視したものだ。
これらはサンサーラが時と場合によって転生法を変えている。その魂の状態や将来をみて適切な方法で魂を送る。
今、彼女が一番助けたいと願う少女は、『魂融合転生』が一番適切なのだが、天界とその世界の狭間で落下中のサンサーラには転生法を選ぶ力が上手く使えない。
(もう!こうなったら私の運に頼るしかないじゃない!!シュラートのばか!)
涙目になりながら、彼女はその救うべき少女の世界へと落ちていった。
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