4日目

 明日ここから出発するため、定期的に行われる蚤の市で買い物をした。地元住民が集まってやる屋台のようなものなので、質はどうかと思っていたが、普通に高かった。こちらの貴族が日常で使えるような代物ばかりだった。ここの住民にとって普通なのだろう。これが文化の差という奴か。


 因みに白いティーカップを購入した。青い薔薇が強く印象に残ったからだ。存在しない伝説の花の色。ついつい買ってしまった。あとは茶菓子に使えそうなクッキー。茶色と白。イチゴのジャムが入っているもの。葉っぱのようなもの。自分の地元では作れないだろと思うぐらいのものばかりだった。


 友人は部屋の飾りで使う乾燥した花束を買っていた。許嫁に渡すのだとか。香りがとても強い。それでも不快にならず、落ち着かせる事が出来る感じだ。元からそういったものなのだろうか。それ以外にも職人が手掛けたというナイフや、アニヌゥスから輸入された緑色のクリスタルのネックレス、水晶玉の中にピンク色の花びらと親子の鹿がある何か。決められた嫁とは言え、愛しているのは本当のようだ。


 買い物の後は芸術の神を祀っている教会とやらに行った。黒い建物だが、金色の線が地面から出て、囲っている。銀色の線も混じっている。キラキラとしているが、落ち着いているという何とも不思議なものだ。


 その建物は芸術家が集う大通りの近くにあった。彼らが集まる理由もそこなのだろう。名を馳せたいと思う輩が祈りながら、描いているのだと思う。ああいった神がいることが羨ましい。


 神官が色々と教えてくれた。ブロッサイだと1つの村に1人の神がいたらしい。たった1人の神を祀るために教会を建てたのだと言う。本当かどうか怪しいが、神様は大体そんなものだ。信じればそれでよし。挨拶したいなと思ったら、神官から分厚い紙と黒い親指ぐらいの長さの棒と濁りのある白い塊(この国での消す道具だと思われる)を受け取った。絵を描いて、置いてくれと言っていた。即興でやった。


 絵を友に見せた。黒と白で表現した。太陽の光が全てを照らす。広大な雪山のところから出ている感じだ。大空を飛ぶドラゴンの群れは雪山を目指す。躍動感溢れる飛びっぷり。ワーラルフで良く見かけるものだ。


 嫌いなところはあるが、故郷が好きだと思う。自然の偉大さと雄大さを幼い頃から心に刻み、唯一の神に祈りを捧げ、助け合い、時にはぶつかり、雪原の大地に生きる。自分がワーラルフの民であると改めて自覚した。


 そして、芸術家として、花の都に行って良かったと思う。芸術家の仲間と話し合って、意気投合して、連絡先交換し合ったし、勉強にもなったし。


 帰国したら、灰色の街に戻り、いつもの作品を手掛ける日常に戻る。学んだことを絵につぎ込むことが出来ればと思う。


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雇われ芸術家の旅行記 いちのさつき @satuki1

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