3日目

 友人の目的である劇を見た。怪盗少女ヴォン。少女ヴォンが怪盗となり、悪い奴らを懲らしめる話だ。革命があって数年後に発刊された本らしく、ブロッサイの民の心を明るくさせたと言われている。


 私も読んだことがある。ラルフ語で翻訳されたものなので、文章がおかしいところはあったが、楽しく読めたと思う。少女の優しさに涙し、ムカつく悪役を懲らしめた時にスカッとさせただけではない。立場上敵対している騎士とのラブロマンスも最高なのだ。


 本を劇にすると聞き、不安に思っていたが、素晴らしいものだった。臨場感があった。ああ、彼女はどうなるのだろうというドキドキ感があった。知っていたはずなのに、そう思わせる演出家と役者の手腕が恐ろしい。


 主演の少女はまるで原作の世界からやって来たような容姿だった。ふわふわとした絹のような金髪、くりくりとした可愛らしいサファイアに似た色の瞳、肌が雪のように白く、背は自分よりも低い。ビスクドールのような容姿だが、実際の演技を見てみると、とてもパワーのある可憐な少女と言った感じ。再現度が高かった。本を何百回も読んだに違いない。


 疑問に思ったが、演出家はどうやって彼女を探し出したのだろうか。容姿と風の精霊の加護が合致出来そうにないが。この辺りは人脈なのだろうと結論付けておく。


 舞台を作ってくれた人にも拍手を送りたい。花の都をあれだけ再現できるとは。役者の見せ方も上手だった。相当、設計に時間をかけただろう。計算を尽くした設計図を見てみたい。


 正直劇はそこまで興味なかったが、良い勉強になった。


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