第5話 おとう、どうしたん?

 俺は、再び、二階に上がって、リビングのソファに座った。



「かかかかかかか…」



 音がする方を見上げると、壁時計があの音を発して全ての針を沈黙させている。



(!)



「おい、わけは聞かないで、今すぐ、二階の部屋に来てくれ!早く!」


 俺は、自分の携帯電話から家電に電話を掛け、電話口に出た息子にそう告げた。


「かかかかかかか…」

「ダダダダダダダ…」


 時計の音と、息子が階段を降りる音が重なり合う。



「おとう!どうしたん?」


 勢いよくドアを開けて入ってきた息子がそう言った。




「お前、俺は居るのか?」


「何言ってん!おとうが俺を呼んだんだろ!」



 見上げると、壁時計の秒針は、動いていた。





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