第4話 おとうは居なかった

 大げさな足音を立てながら階段を上り、部屋のドアを開けて覗いた息子と目と目が合ったが、そのまま、すぐにドアを閉めて階下に降りていった。



「さっきは、なんか用事でもあったのか?」


 1階の居間に降りた俺は息子に尋ねた。


「え?おとう、どこに居たん?」


「どこに居た、って二階に居たけど」


「え?居なかったよ」


「だって、お前、さっき二階の部屋のドア開けて目が合ったじゃん」


「いやいやいや、居なかったってば」


「変な奴だな。まあ、いいや、で、なんの用だったんだ?」


「あ、いや、タブレットの暗証番号押してもらおうと思ったんだけど、おかあにやってもらったから」






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