第6話 始業式①
僕と先輩たちとの間に流れた気まずい空気は、学校に着いたときには消えていた。
まあ、校舎が違うから当たり前のことだけど。
微かに聞こえた話から先輩たちは同じ教室のようで校舎1棟2階の教室を、僕は校舎3棟3階の教室をHRとして使っている。
僕は憂鬱になっていた気持ちを払拭して、既に何人か集まっていた教室に足を踏み入れた。
教室の中は思っていた以上にガヤガヤとして騒がしかった。同じ学校同士で固まって一つのグループを形成したり、人見知りなのか自席に座ったまま動かなかったりしている。その内の後者の一人が僕の方に歩み寄ってくる。
「なあ、葉山くん。電車で一緒やった美人さんと知り合い?」
開口一番聞いてきたのは若月先輩のことだった。そんな彼こと
「んー、僕にとっての恩人になるのかな?」
「恩人? 何か助けてもらったん?」
僕は彼の体を引き寄せて、話し声が小さな音になるように細心の注意を払いながら質問に答えた。
「恥ずかしいんだけどさ僕、試験の時に受験票無くしてたんだ」
「え、それヤバくね」
彼は僕が行った行動の意味を理解したのか、同じく小さな声で周りの気を引かないようにしながら話してくれた。
「そうなんだよ。でも、彼女が見つけてきてくれて、しかも応援までしてくれたから入試に受かったんだよな」
「いいな、あんな先輩と会えるなら俺も無くしてくればよかった。そう思わないか、
何時からいたのかわからないが、僕の後ろに少し赤みがかった長髪に、ブラウンの綺麗な目をした整った顔立ちの女性が立っていた。
「そうね。そのまま拾われなくて試験に落ちてればよかったのに。結城の悔しがる顔を見てみたかったわ」
「…………」
彼女は冷淡に守郷に告げ、彼は撃沈した様子で僕は、彼を慰めることとなった。どうやら、彼女は若月先輩と違ってかなりSっ気が強いようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます