第5話 嫉妬?
琢磨と呼ばれた先輩は若月先輩と一緒に降りようとする僕を呼び止めた。
「なあ、冬樹」
「琢磨先輩、どうしたんですか?」
「……お前、どう言う了見で凛花と一緒にいるんだ?」
琢磨先輩は顔を烈火の如く燃やして、声に怒気を含ませながら冷静に言った。
〈下手に刺激すると危険だ〉
「…………」
僕が返答に困って口を閉ざしていると、琢磨先輩は
「凛花はな、俺の幼馴染だ。……今日はな大事な日なんだよ、お前に邪魔された俺の気持ちがわかるか?」
僕に伝わるように端的に述べた。
僕はようやく、電車の中での彼の行動の意味を理解することができた。
彼は今日、告白する予定だったのに、俺が隣に座って若月先輩と話していたからチャンスを逃してしまったようだ。
「ねえ、まだなの?」
電車の外から彼女の声が聞こえてからの彼の顔は平常運転となり、
「お前は、もう凛花と関わるな。絶対だ」
最後に置き言葉を残して電車から降りた。僕は、早々に先輩の逆鱗に触れてしまったと後悔した。
僕は今、若月先輩と琢磨先輩の後ろをついていっている。琢磨先輩は僕と一緒に行くのを拒絶したようだが、若月先輩の一言で折れたようだ。そして、今の位置がその妥協点となった。
「冬樹は、どうしてこの高校を選んだの?」
若月先輩は振り向きざまに僕へ質問してきた。その隣で琢磨先輩は睨みつけている。
〈なんで、あいつに話振るんだよ〉
その目から何を考えているのか分かり易いほどのものだった。
〈ほんとだよ、どうして僕に今、話を振るんだ?〉
若月先輩のその言動に理由を見出せなかった僕にとって、今日が初めて琢磨先輩と意思疎通した初めての記念日となった。
「……」
考え事と、琢磨先輩の視線で何も喋れなくなった僕を見て、不思議そうに首を傾げながら、若月先輩は琢磨先輩との話に花を咲かせた。
〈はあ、もう帰りたい〉
ストレスで腹が少し痛くなった僕は、ネガティブなことを考えたがそれを心の中で思うに留めた。
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